「サンフランシスコ・フォーティナイナーズ(49ers)」のクォーターバックとして活躍したキャパニックは、NFLの選手らが黒人に対する警察の暴力に抗議するため、試合前の国歌斉唱で起立することを拒否し、膝をつくポーズをとった運動「Taking A Kneeムーブメント」の中心人物だ。
ナイキが彼をマーケティングに起用することは、米国の保守層から強い反発を浴びていた。同社は昨年からキャパニックを広告に起用し、彼のアップの白黒写真に「何かを信じるんだ。それがすべてを犠牲にすることになったとしても(Believe in something. Even if it means sacrificing everything.)」という言葉を重ねていた。
しかし、今回のスニーカーの成功により、ナイキの決断が正しかったことが証明された。「Nike Air Force 1 “Colin Kaepernick”」と呼ばれるシューズには、キャパニックの顔のイラストが描かれ、彼が最初に国歌斉唱を拒否した日付である、2016年8月14日の文字が刻まれている。
キャパニックを起用したナイキの広告「Dream Crazy」は昨年9月、エミー賞の「アウトスタンディング・コマーシャル」賞を受賞した。しかし、米国の保守層はナイキを批判し、ボイコット運動を起こすと脅していた。
キャパニックはまた、ナイキが今年の夏に発売を計画中だった旧デザインの星条旗をあしらったスニーカーを発売中止にさせていた。ナイキは毎年、7月4日に星条旗をモチーフとしたスニーカーをリリースしているが、今年のデザインは米国が独立した際の州の数の13の星を描いたもの(ベッツィー・ロス・フラッグ)だった。
この旗は、奴隷制度時代のシンボルであり、黒人を侮辱するものだとキャパニックは抗議し、ナイキはスニーカーの発売を見送っていた。
キャパニックは2016年に全米を席巻したブラック・ライヴズ・マター(黒人の命も大切だ)ムーブメントを象徴する存在となった。彼はドナルド・トランプを支持する米国の保守層から敵視され、事実上NFLから追放されていた。