眠りがパフォーマンスを変えた FC東京の林選手が語る「睡眠力」

FC東京の林彰洋選手(c)F.C.TOKYO


──試合前には、その睡眠力はどのようにコントロールしていますか?

試合前日は午後10時半に寝ると決めているので、8時半過ぎに風呂に入って体を軽く温めて、寝室の照明も間接照明に変えます。そこから緩いストレッチを1時間くらいして、リラックスできたかなと思うあたりで10時前くらいになります。

また、意識的にスマホを触らないようにしています。すると、ベッドに入ったとき寝ることに集中できるんです。スマホに依存しない感覚が、自分のなかでちゃんとできてきました。

──でも、あまりストイックにやり過ぎると逆にストレスになりませんか?

僕は毎日、睡眠計測のデバイスとアプリを使って自分の睡眠を計測していています。これが自分の基準になるというか、良い睡眠が取れているという自信にもなるし、ストレスというよりも、わくわくしながらアプリを見られる。ただ、全然良い睡眠が取れてないなと思ったときにアプリを見ると、案の定点数も低くて、今日は気をつけようというモチベーションになります。


林選手が利用している睡眠計測アプリの一例。心拍、呼吸、体動データをもとに睡眠の内容が可視化される

今年の開幕戦前も、遠征先の静岡へ睡眠計測デバイスを持っていったのですが、開幕ということでとても緊張していたのか、アプリで表示される心拍数やストレスレベルの表示がいつもより高かったんです。

それ以前にアジアチャンピオンズリーグの試合もあり、公式戦は今年初めてではないし、自分ではあまり緊張を感じなかったのですが、数値として出るとそれがわかる。頭では考えていないのになぜこんなに眠れないのだろうというときに納得でき、自然と睡眠へのフォーカスも変わってきます。

──なるほど。そうして睡眠に向き合う中で、仮眠も取り入れたりしていますか? アスリートの仮眠事情を教えてください。

練習日は、朝6時に起きて10時から2時間ほどトレーニングをするのですが、終わった後はかなり疲れていて眠たくなります。家に帰ってそのままベッドで横になって、30分……のつもりが、2時間とか3時間とか深い眠りに入るまで寝てしまい、夜になると今度は眠れなくなる。僕もそうでしたが、そういう選手は多いと思います。

また、夜に眠れないだけでなく、なんとなく「昼に2時間寝たからもう少し寝るのは遅くても」という気持ちにもなりがちで、就寝が0時を過ぎてしまったりする悪循環になります。仮眠と合わせればそれなりの時間は寝られているのですが、全然心地のいい眠りではないですね。

だから、できれば仮眠はしない方がいいと思ってたのですが、小林さんからそのとり方についてレクチャーを受けて、条件を整えてみると仮眠は本当に良いものになるということを実感しました。仮眠のとり方次第で、夜の睡眠も変わってくる。いまでは家に仮眠用の環境を整えています。
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文=小林孝徳

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