睡眠をしっかり取ることで、運動のパフォーマンスはどれだけ向上するのか。アスリートたちは、それぞれ勝利するための独自の睡眠方法を持っているのか。それらの疑問を解くために今回、FC東京のゴールキーパーとして活躍する林彰洋選手に話を聞いた。
林選手は僕と同じ1987年生まれ。東京都出身で、流通経済大学のサッカー部で活躍した後、海外のチームを経て、2012年に清水エスパルスへ入団。2017年に現在のチームFC東京に移籍し、去年はJリーグのベストイレブンにも選ばれている。健康意識が高い彼は、睡眠についてどう考え、どう向き合っているのだろうか。
──アスリートのパフォーマンス向上と睡眠の関係について長らく考えているのですが、林選手はどんなことをきっかけに意識するようになりましたか?
プロスポーツ選手として毎年活動をしていると、良いシーズンもあれば悪いシーズンもあり、また1年を通じてもパフオーマンスの浮き沈みや波があったりします。
そのなかで、良いものを安定的に出していきたいという欲求はずっとあるのですが、以前は、選手である以上は、サッカーの「技術」がいちばん重要だと思っていたのです。
でも、それが自分の勘違だったと気づく出来事がありました。1年ほど前、前日の睡眠の取り方で、当日の試合のパフォーマンスがまったく違うことを痛感したのです。そして、常に100%は無理でも、80%以上のコンディション維持するためには睡眠に向き合わなければと思い、考え直すようになりました。
睡眠が充分に取れていると、集中力はもちろん、ゲームに対する意欲も全然違います。圧倒的に前向きになれるというか、しっかり眠れているという安心感もあって、メンタル的にも充実します。僕は、充分な睡眠にプラスして、サウナとかストレッチも日常的に励行しているのですが、それらが自分のなかでルーティンとして動き始めたときは、さらに充実感が増しましたね。
自粛期間中、取材はオンラインで行った
──睡眠によって、身体の充実だけでなく、気持ちも前向きになるということですね。
僕たちは年間300日近くトレーニングをしています。その300日のうちの1日を、たかが1日と思ってやるのか、すごく意欲的にやるのかで、心身ともにずいぶんパフォーマンスは違ってきます。その意欲的にやれる状況、それをつくり出す源が「睡眠力」だと思います。
睡眠力が上がることによって、サッカーに対する向上心やプレーのレベルが上がり、成長していける。睡眠をきちんと取るようになってから、その実感が増しています。