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2020.05.28 09:00

本田圭佑、高岡浩三、溝口勇児──異色の3人が、新たなファンドを立ち上げたワケ


事業の成長とともに、事業領域もヘルスケアからウェルネス、そしてウェルビーイングへと拡大。これまで“健康”という課題に向き合い続けてきた溝口だが、その過程で「孤独・退屈・不安」という課題にも関心を持ち始めていったという。

「健康でなければ⽣活のすべてが崩れるほど健康は重要なものですが、⼈が⽣きる意味は“幸せになる”ことだと思うんです。日本は長寿国として知られ健康意識が高いですが、一方で⾃分が幸せだと感じている⼈は少ない。これは⽣産性が向上したことで、あらゆる⾯にゆとりができ、その結果『孤独・退屈・不安』が⽣まれてきたことが原因だと考えています。21世紀の課題とも言われる『孤独・退屈・不安』において、日本は課題先進国ですが、この問題に真剣に取り組んでいるプレイヤーはいません。だからこそ、僕は“21世紀の課題解決”を次の挑戦テーマとして選ぶことにしました」(溝口)

溝口が「孤独・退屈・不安」という課題解決に関心を持ったのと、ほぼ時を同じくして関心を持った人物が本田だった。彼はこう課題間を口にする。


提供:HONDA ESTILO

「日本は経済成長している国に抜かれたり、抜かされそうになったりしている現実はありつつも、日本は世界的に見て素晴らしい国で、平和で豊かな国であることに異論の余地はないと思います。ただ、そのトレードオフとして精神的な課題がすごく大きくなってきている気がする。僕が海外で日本人について、『働きすぎ』や『休暇を取らない』など言われるんですよね。要は幸せを追求するのが下手だということです。

ここ数年の働き方改革や今回の新型コロナウイルスの蔓延で、『命とは何か』など、ウェルビーイングについて考える人が増えたと思います。ただ、孤独・退屈・不安といった精神的な課題は、今後テクノロジーが発展すれば発展するほど、トレードオフのように問題が大きくなっていく。だからこそ、この問題にアプローチし、解決を目指していくべきだな、と思いました」(本田)

大企業とスタートアップの融合がイノベーションの鍵になる


そんな同じ課題意識を持った2人が交差するのは、昨年末のこと。もともと友人関係にあった2人だが、溝口の代表退任を機にファンドの構想が動き出す。

「代表を退任した直後、まだあまり気持ちの整理がついていない時に本田圭佑に会ったら、『おめでとう』と言われたんです。初めて言われたので『どういうこと?』と聞き返したら、『これから一緒に色んなことやれるじゃん」と言ってきて。それで2人で何をするか話をする中で、人の生きる目的は幸せになることや、後悔しない日々を歩むことだから、それを妨げる『孤独・退屈・不安』をなくすための挑戦をしようということになったんです」(溝口)

また、そんなタイミングでキャリアの節目を迎えようとしていたのが、高岡だった。溝口が退任の報告をしたところ、高岡から「3月末に退任を考えている」と連絡があったという。

「実は過去に『FiNCのCEOになってほしい』と本気で言ったことがあるんですよ(笑)。個人的にもっとも尊敬する経営者で、当時はCEOになってもらうことは叶わなかったので、今回は『ぜひ一緒にやりましょう』と声をかけたんです。やはり高岡さんみたいに、あらゆる経験を積んできた百戦錬磨の経営者がサポートしてくれることで大きなことが成し遂げられると思っているので、一緒にできるのは心強いですね」(溝口)
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文=新國翔大

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