ビジネス

2020.06.20

携帯電話デザイナーから相模原のカフェオーナーに。「KPIのコペルニクス的展開」はどう生じたか

写真=嶋田耕介


カフェをUXとして捉えた時浮き上がる、「美しいモノの切り取り」の大切さ


曽根:ZEBRAのUX(ユーザー・エクスペリエンス)についての着想はありましたか?

嶋田:基本は人が一番気持ちよく過ごせる場所です。空間の豊かさは大事ですね。オーソドックスに経営面から考えると、一席あたり何平米として、席数は何席とする、と、計算をするわけですが、教科書通りに平米単位では考えたくないと思っています。言い換えると、KPI(Key Performance Indicator)としては、大事ではないと思っています。

null

嶋田:たとえば、狭い空間であなたの隣の席に、あなたが心地良いと感じないタイプの客が座ったとします。その空間には強い負の相関が出ます。一方、広いテーブルの端に、その客がいたとしても、あなたはそれほど気にしないでしょう。空間の広さというのは、それだけ大事なものなんです。

一方、空間が広いといっても、広い空間のお店は、どこにでもあります。ZEBRAで意識しているのは「美しいモノの切り取り」です。ショーケースに並んでいる雑貨でも、ZEBRAのお店の中に置いた瞬間に、存在感を出します。そして、その中にいると人(お客様)は輝く。店内に置くモノには、こだわっています。当然、手作りのモノもあったりします。



嶋田:よくお店が、海外っぽいと言われることもあるのですが、それは僕が元々、家具のデザイナーだったことが影響しているかも知れません。ZEBRAのお店に来て、カウンターが高いと思いませんでしたか?90センチあります。一般的な日本のカウンターは78センチが標準です。カウンターの高さ一つとってもアイコニックなバランスというのが存在するんです。

ちなみに、椅子は43センチの高さだと日本の椅子、47センチだと欧米の椅子、テーブルは72センチだと日本、77センチ以上にすると欧米の雰囲気になります。

海外っぽい演出をしているわけでもなんでもなく、カウンターがちょっと高い位置にあるとか、日本規格ではない家具があるとか、それが溢れていると、日常が非日常化するんです。

後編 カフェオーナーが愛車ポルシェと引き換えに手にした「3つの競争優位性」はこちら

嶋田耕介◎携帯電話などのデザインを手掛けるデザイン・ディレクターとして活躍ののち、ベーカリーカフェ「ZEBRA Coffee&Croissant」を開店、現在3店舗を展開する。また、店舗やビルのリノベーション・コンサルティングやブランディングデザイン(CI、コーポレートアイデンティティ計画)も手掛ける。株式会社EXIDEA本社オフィスビル全体のリノベーションを一手に引き受け、1階にはZEBRAのエッセンスも盛り込んだ社員専用のカフェスペースを設けた。ほか、最近東証マザースに上場したセルソース株式会社のブランディングデザインも手がけた。 Shimada Design Solutions

曽根康司◎株式会社キャリアインデックス執行役員、社長室長。慶應義塾大学法学部政治学科卒。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程EMBAプログラム在学中。原宿と下北沢で時計店を経営したのち、インターネット業界へ。「焼肉探究集団ヤキニクエスト」メンバーでもあり、全国数百件の焼肉店を食べ歩いている。

ZEBRA Coffee & Croissant
https://www.zebra-coffee.com

文=曽根康司 写真=嶋田耕介 編集=石井節子

ForbesBrandVoice

人気記事