例えば、デジタル一眼レフカメラの魅力を「プロのような写真が撮れる」という言い方ではなく、「背景をぼかして、撮りたい対象だけにフォーカスをあてると、愛が深まる」という言い方で消費者に訴求して、ヒットした事例などが挙げられる。
インサイトは、「消費者自身も明解には気がついていない」ことなので、さまざまな調査などから、企画者の側が「発見」しなければならないとされている。
買いたくなるポイントはどこか?
この「インサイトの発見」を“オマケ”に活用して、大きな成果を挙げた例を紹介しよう。世界最高峰の広告およびマーケティング・コミュニケーションの祭典であるカンヌライオンズで、2018年にモバイル部門ゴールド他を受賞したペディグリーの「Selfie STIX(セルフィ―・スティックス)」という事例である。
「Selfie STIX(セルフィ―・スティックス)」
愛犬家がスマートフォンでワンちゃんと一緒に自撮りしようと思っても、犬はなかなかじっとしていてくれない。嫌がって、すぐに顔をそむけてしまうので、なかなか良い写真が撮れない。そこでSTIXというペディグリーの商品をスマホの上に括り付けられるクリップを開発した。犬はそのドッグフード欲しさに、スマホカメラのレンズをじっと見て、めでたくセルフィ―が撮れるというわけである。
ペディグリーは、このクリップを、STIXを買えば必ずもらえるオマケとして商品に付け、また写真上で犬の顔に帽子を被せるなどの加工ができるアプリも開発した。
ドッグフードの広告コミュニケーションを考えようとするとき、従来は「愛犬のための栄養が豊富」とか「愛犬が喜んで食べる」とか、商品の良さをどう伝えるかに知恵を絞っていた。しかしながら、そういったメッセージでは、愛犬家の心を動かすことはできない。
アンケート調査への回答に、消費者は栄養や愛犬の食いつきの良さを書き込むかもしれないが、“ココロのツボ”は別のところにあったことになる。ドッグフードをめぐる環境のなかでは、「ワンちゃんと一緒にセルフィ―を撮ることが可能になる」ということこそが、買いたくなるポイントだったのだ。
この事例では、“インサイトを突いたオマケの開発”という形で、大きな成果を挙げたことになる。