ビジネス

2020.04.14

石川涼のブランド論──なぜ、彼が手掛けるブランドは支持され続けるのか?


お客さんに喜んでもらうために最短でやれることは何か


2000年代には裏原ブームの次や、グローバル時代におけるブランドのあり方を、2010年代にはInstagram登場と実店舗の可能性をそれぞれ先取りしてきた石川氏。どうやって、生活者が求めるもの見出してきたのだろうか。

石川氏「お客さんのことを見てきただけ。#FR2がセールをしないのも、メルカリを抵抗なく使う若い子からヒントを得たんです。

彼らは、ブランドものを1万円で買って4000円で売れたら、6000円で買ったことと同じだと捉える感覚を持っています。ということは、最初からセールをしていて二次流通で売れないようなブランドはわざわざ買わない。こういうお客さんの消費感覚を観察し続けています。

今の時代、スマートフォンにしかヒントはない。ビジネス本に書いてある情報は世に出た時点で古くなってしまう、だからこそSNSからリアルタイムで得られる情報、たとえばお客さんの投稿を観察して、どんなものを欲しているか考え続ける必要があります。

そもそもお客さんが見えていない企業が多い。業界の既存のやり方に縛られていたり、賞を取って業界に認められて、売れるようにしようと考えたりしている。それだと手順が逆になり、お客さんが見えづらい。業界のやり方や賞よりも、お客さんに喜んでもらうために最短で何をやるべきか考えたほうがいい」

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生活者をよく観察することで、飄々と時代の数歩先を行く石川氏。最後に、これからどんなものが求められると考えているのか聞いた。

石川氏「前提として、お客さんが求めるのが、完全にモノじゃなくなってきている。何でも買える時代だから、モノを所有する喜びは薄れている。それに変わる喜び。僕は『移動』が鍵になるんじゃないかと思っています。

10万円を自由に使えるんだったら、買い物より旅行が良い時代になってきているのではないか。だとするならば、旅行で必要なものなら売れるんじゃないか、とかね。だから、#FR2は『カメラマンの着る服』という設定なんです。これ以上言うとヒントになってしまうので、ここから先は言わないですが(笑)」

モノを所有することに変わる喜び。例えば、機能的な価値ではなく、情緒的な体験を提供する。つまり生活者の心を動かすこと。

おもしろい、かっこいい、かわいい。時代によって感覚のものさしが移ろっていくからこそ、生活者を観察し続けることが重要なのだろう。石川氏は、当たり前のようにそれを実践している。だからこそ、時代の数歩先を見極め、生活者に支持されるブランドを生み出せているのだ。

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文/葛原信太郎 取材・編集/木村和博 撮影/須古恵

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