ビジネス

2020.04.14

石川涼のブランド論──なぜ、彼が手掛けるブランドは支持され続けるのか?


コミュニケーションの中心になるブランドを作れば売れる


海外を回るうちに、石川氏は、若者のコミュニケーション方法の変化に気づく。

石川氏「2010年当時、SNSと言えばFacebookが人気で、海外を回りながら毎日眺めて『新しい売り方』のヒントを探していました。あるとき、偶然見つけたスペイン在住の女の子が、自分の顔写真に猫の鼻を描いてアップしていたんです。彼女たちは写真でコミュニケーションしている。これからテキストではなく写真でコミュニケーションする時代になっていくと気づいたんです」

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その考察は見事に的中。2010年10月に生まれたInstagramは、瞬く間に主要なSNSの一つになった。

石川氏「Instagramの登場は、ファッションに関する話題が生まれる場を、リアルからオンラインへ移行させている。

インターネットが普及する以前、ファッション好きは街に集まって『そのブランドかっこいいね』『あのブランドの新作が良いらしい』とコミュニケーションしていて、街で人気のブランドが売れていた。スマートフォンをみんなが持つようになって、SNSがコミュニケーションの中心になっている。

つまり、そこで人々の心を動かすブランドを作れば、売れると考えた。かっこいい、かわいい、おもしろいなどの感動を提供できるブランドになる。それが#FR2のスタートに繋がりました」

石川氏は、コミュニケーションの中心になるためのヒントも、Instagramの投稿から見つけだした。

石川氏「メンズのセルフィーは、なぜかタバコを吸っている写真の投稿が多いと気づきました。ならば、タバコの箱に書いてある警告文『Smoking Kills』がプリントされたTシャツを作ってみようと考えました。

このTシャツを着ながら、タバコを吸うセルフィーはSNSでも話題になる。なぜなら、ギャップがおもしろいから。SNSに投稿したくなるものは何かを念頭に、#FR2の商品デザインを考え抜いたんです。スマートフォンの利用時間が増えている時代だからこそ、そこで感情を動かすことが大事。そこで一番心を動かせるものは、写真だと思ったんです」

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同じ発想で「No Photos」のウェアも作成。「Smoking Kills」と同じようにInstagramにアップされて、売れていった。海外セレブリティを含むさまざまな著名人も#FR2を着た写真をInstagramにアップし、その知名度は世界に拡大。広告費を一切使っていないのにも関わらず、オンラインのみの販売で世界130カ国以上で売れている。
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文/葛原信太郎 取材・編集/木村和博 撮影/須古恵

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