ビジネス

2020.04.14

石川涼のブランド論──なぜ、彼が手掛けるブランドは支持され続けるのか?


スマホでなんでも買える時代、オンラインで買えないものが求められる


2015年以降になると、Instagramを戦略的に使ってファンを増やすブランドが増えてきた。「常に時代の半歩先にいかないと勝ち続けられない」と考える石川氏は、すぐに次なる一手を打つ。

石川氏「昔はファッションブランドのオンラインショッピングは当たり前ではなく、する人もPCを使い、サイズや色味を心配しながら購入することが多かった。ここ数年はスマートフォンでの買い物が日常になり、トイレットペーパーでさえAmazonで買う時代。次にお客さんが求めるものはオンラインで買えないものだと仮説を立てて、実店舗を始めることにしました」

実際に、2017年に#FR2初となる実店舗の「#FR2原宿店」をオープン。その熱が冷める間もなく目と鼻の先に「#FR2梅」をオープンさせる。コンセプトは「No Online Sales」。ECサイトの運用体制が落ち着いて間もない時期に、わざわざコストの掛かる実店舗を本店のすぐ近くにオープンすることに対して、社員から反対の声も挙がった。

しかし、必要性を自ら説明し、社員を説得。蓋を開けてみれば、売上予想の3倍を達成した。手応えを感じた石川氏は、那覇市の国際通り、金沢市のひがし茶屋街エリア、京都市の八坂神社の目の前と、次々に新しい店舗を展開。それぞれの店舗では、ECサイトや他の店で買えない独自の商品を販売した。


石川氏「直営店は全て観光地のど真ん中に作っています。なぜなら、あらゆる人が訪れるから。

例えば、#FR2のお客さんの友達が沖縄旅行に行くとする。その話を聞いたお客さんは『こんなブランドの店があるから買ってきて。そこでしか買えないんだ』と頼む。友達は『そんなにレアなの?』と聞き、コミュニケーションが生まれる。結果、頼まれた人も買ってくれて売れる枚数が増える。さらにその人の友達が沖縄に行くときの話題に上げてくれて、#FR2が広まる。このように、無限にコミュニケーションが生まれていく。

ECサイトで買える#FR2があり、みんなにリーチしながら、ECサイトでは買えないものを実店舗で展開していく。そこでしか買えないにものは価値も上がり、セールとは無縁になるんです」

観光地に実店舗を展開することで、話題に上り、認知が広がる。そこにしかない店舗だからこそ、記念に写真を撮りSNSで投稿する。更に認知が広がる。#FR2は生活者のコミュニケーションの中心になることで、自然にブランドの認知が広がっていく仕組みになっている。
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文/葛原信太郎 取材・編集/木村和博 撮影/須古恵

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