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2020.04.14

石川涼のブランド論──なぜ、彼が手掛けるブランドは支持され続けるのか?

※この記事は、2020年1月にXDで公開されたものを転載しております。

トレンドが目まぐるしく変わる今、生活者に支持されるブランドになるためには、どうすればいいのだろうか。

時代の数歩先を見極め、生活者に支持されるブランドを生み出し続ける人物がいる。「せーの」代表取締役社長 石川涼氏だ。

2004年、渋谷を代表するファッションブランド「VANQUISH」を立ち上げ、2014年には、新しいブランド「#FR2」をスタート。



「Smoking Kills」「No Photos」など、風刺の効いたシンプルなメッセージをのせたウェアが、Instagramを中心としたセルフィーによって世界中に広がっている。#FR2のECサイトのデータによれば130カ国以上で売れているそうだ。

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提供:せーの

石川氏はこのブランド開発において、「生活者のコミュニケーションの中心になること」を目指したという。それはなぜか、そもそも、どのような経緯でブランドを立ち上げたのか。

同氏へのインタビューから浮き彫りになったのは、一貫した顧客視点だった。

自分たちにしかできない方向へ振り切る


石川氏は、2000年代初頭から若者を対象にしたファッション業界に身を置いていた。

90年代のメンズファッションを牽引した裏原文化に根付いたストリートブランド。彼らの高価格帯商品は熱狂的なファンを生んでいった。しかし00年代に入り、ブームはだんだんと下火になる。

その頃のメンズファッションにおいて、ウィメンズにあった「ブランド力はあるが価格が安い」ポジションを取るブランドはなかった。メンズにも低価格帯ファッションの需要があると見込んだ石川氏は、渋谷の「ギャル男」「お兄系」を対象にしたVANQUISHを2004年にスタート。2006年にはメンズフロアがオープンした渋谷109に店舗を構え、同ブランドは渋谷の若者を象徴するファッションブランドになっていった。

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せーの代表取締役社長 石川涼氏

売り上げを好調に伸ばしていったVANQUISHだが、海外展開を考えるなかで想像していなかった課題が立ちはだかる。

石川氏「VANQUISHを世界中の人が欲しがるブランドにしたいと思って、これまで対象としていた人に限らず、誰しもが受け入れやすいものにデザインも変化させていきました。例えば、白いシャツにジーンズなど。

すると、その瞬間にライバルがZARAやH&M、ユニクロなどになっていたのです。どこの国にも都心の一等地に彼らの店舗があり、どこでも同じ商品が買える。圧倒的に知名度があり、価格も安く、クオリティーも高い。そんな彼らと同じ土俵で競っても勝てない。もっとニッチな存在にならなければと考えました」

大企業がグローバルに展開するなら、渋谷に根ざした自分たちにしか作れないウェアを作る。それが、大企業とは違う形でグローバルで勝負できる方法なのではないか。そう考えた石川氏は、渋谷の象徴的な建物や観光地を刺繍した「SHIBUYA スカジャン」を発売した。

石川氏「それがめちゃくちゃヒットしたんです。大企業とは違う戦い方があるとあらためて実感しました。ただこのやり方は時代が変化すれば、通用しなくなるかもしれない。そこで、『新しい売り方』を考えるために海外を回って、世界の人が今何に興味を持っているかを観察しはじめました」
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文/葛原信太郎 取材・編集/木村和博 撮影/須古恵

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