経済・社会

2020.03.11 06:00

福島第一原発の現在地。震災から9年、まだ4万人が家に帰れない

福島第一原発事故から9年。廃炉作業は続く (GettyImages)


行く手阻む高線量、立ち入り不可


政府や東電が「廃炉」と呼ぶ、福島第一原発の事故収束作業は、この9年で確実に進んだ。
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安倍晋三首相がスーツ姿で原発を視察したように、構内の放射線量は除染によってかなり下がった。一般の視察ならば、顔全体を覆う全面マスクや、服に付着した放射性物質を外部に出さないための防護服を着る必要もない。構内の96%で、現場作業員もマスクと防護服が不要だ。

事故収束の柱は、原子炉内に溶け落ちた核燃料(デブリ)と、原子炉建屋最上階の使用済み核燃料プールに保管している核燃料を、それぞれ取り出してリスクを減らすことにある。これらの作業現場はいずれも放射線量が高く、防護服などが必要な残り4%の場所だ。

プールからの核燃料取り出しは、4号機が14年12月に完了済みだ。事故時、定期検査で原子炉内に核燃料がなかった4号機はメルトダウンを免れ、プールに保管していた核燃料1535体は、近くにある共用プールという施設に移された。
 
メルトダウンが起きた3号機では、19年4月から核燃料搬出が始まった。当初は14年末にも始める計画だったが、高線量で準備作業が大幅に遅れた。水素爆発の影響でプール内に飛び散った小さながれきを撤去しながらの作業で、21年3月末までに計566体の核燃料を共用プールに移す。
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プールからの核燃料搬出が進む福島第一原発3号機原子炉建屋内
 
3号機と同様メルトダウンが起きた1、2号機でも、プールからの核燃料搬出時期は当初の計画よりも大幅に遅れている。核燃料392体が残る1号機は27~28年度、615体が残る2号機は24~26年度に搬出を目指しているが、予定通り進められるかは不透明だ。
 
特に1号機は水素爆発の影響で、原子炉建屋上部が大破しており、崩落した鉄骨やがれきの撤去が必要だ。さらに原子炉格納容器の上部にあるコンクリート製の巨大な3枚重ねのふた(重さ約500トン)がずれ落ちてしまった。ふたの隙間からは毎時2000ミリシーベルトという強い放射線が漏れ、隣接のプールからの核燃料搬出作業の障害となっている。

2号機の原子炉建屋最上階も、毎時680ミリシーベルトと線量が高い。原発で働く作業員は1年間の被ばく線量が50ミリシーベルト以下と決められていることを踏まえれば、人が立ち入って作業できる環境ではないことがわかるだろう。
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文、写真=小川慎一

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