小6の宇多田ヒカルも突破できなかった、お〜いお茶新俳句大賞の超難関

新俳句が書かれたペットボトル


その後あまりにも数が増えたため、現代俳句協会の専門家によって審査をしてもらうようになった。1次審査は13、14回ほど行われ、200万句から2万句にまで絞り込まれる。


1次審査会の様子(写真=伊藤園)

2次審査では最終審査などに進む句を選ぶのだが、そこで選ばれなかった句には敗者復活戦もある。敗者復活の審査会では俳人ではない人にみてもらう。ジャーナリスト、編集者、ことわざ研究家の人などが審査をする。あえて俳人とは違う視点で新俳句を審査できる人を4人選んでいる。

新俳句は「お〜いお茶」の登場に合わせて誕生した。そのため、従来の俳句とは目指す先が違っている。現在当たり前に私たちが飲んでいる「お〜いお茶」は、急須でお茶を飲んでいた当時、目新しいものだった。今後緑茶飲料が一般化するだろう、という目論見のもと開発された飲み物だ。新俳句もいわゆる伝統的な俳句ではなく、「お〜いお茶」が目指す、日常で飲むお茶に合わせた堅苦しくない俳句を広めたかったという。そのため、従来の俳句にあるルールなどはなるべく取り除くようにした。

また、審査の過程でも俳人以外の人の目を大切にしている。最終審査でも写真家、作家、女優、ギタリストなどが登場する。これは「お〜いお茶」のマーケティング戦略そのものだった。

6. 200万 そのうち学生 9割以上



第30回伊藤園お〜いお茶新俳句大賞授賞式

30年間続いた理由の一つは、教育現場に根付いたことだ。約200万句の中で9割以上が学生応募となっている。新俳句は、学校に支えられてきたのだ。宇多田ヒカルが学校の授業の一環で新俳句を詠んだように、全国各地の学生も同じように応募している。今では団体応募という形で、参加に積極的な学校が生徒の俳句をまとめて送るケースが増えている。

伊藤園が学校との接点を持ち始めたのは、この4、5年のことだった。校長先生が俳句がもともと好きで、俳句をよむことは自然を観察することに繋がるため、積極的に生徒に新俳句に応募するように促す場合や、1人の先生が生徒のモチベーション向上のために参加する場合もある。

学校現場では、最近学生が短文を好む傾向から校外学習や修学旅行の感想などを俳句で書かせることが増えてきているという。140字以内の制限があるツイッターなどの普及が後押ししているのだろうか。俳句への親しみは時代が変わっても色あせていないことがわかる。
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文=井土亜梨沙、写真=小田駿一

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