2. 五七五 宇多田ヒカルの 原点に
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宇多田ヒカルは小学校6年生の時に新俳句に出会った。2006年5月号のInvitation(インビテーション、現在休刊中)という雑誌で、漫画家の浦沢直樹との対談でこのエピソードについて答えている。
「わたしの原点は、小学校6年生のときに『お〜いお茶』の俳句コンテストに、学校で応募させられた俳句かな。それが実は、浦沢さんにさっき指摘されたわたしの本性を見事に現していて、『雪だるま 一緒に作ろう 解けるけど』っていうんです」(原文ママ)
どことなくせつなく、諸行無常を思わせる歌詞をうたう宇多田の原点が、五七五にぎゅっと詰まっている。小学生の言葉を使っても、限られた字数の中でも、彼女の世界観を垣間見ることができる。残念ながらこの新俳句は落選してしまったため、原本は残っていない。
30年という歴史の中では宇多田ヒカル以外にも応募した著名人がいる。女優の乙葉、元プロ野球選手の小石博考、芸人の狩野英孝や歌手のaikoも応募経験があることを話している。
3. 季語もない 字が余っても 大丈夫
伝統的な俳句というと、五七五という制約以外にも様々な規則があり、なかなか手が出しづらいのが現状だ。しかし、新俳句はその名の通り、俳句の制約をなるべくなくし、誰もが応募しやすい仕組みを作った。
季語がなくても良い、多少の「字余り」「字足らず」も良い、「定型」でなくても良いなど、俳句の「常識」を変えている。新俳句の魅力についてアンケートをとった結果、「『お〜いお茶』に掲載される」に次いで「応募がしやすい」が2番目に多かった。
大賞に選ばれた作品には、失礼ながら「自分でも詠めちゃうのではないか?」と思わせる作品もある。五七五以外の制約がないシンプルさが、30年間続いた秘密の一つだ。