「一瞬で何もかも奪う」アフリカの大地を食い尽くす蝗害、バッタ博士が解説

(c)FAO/Sven Torfinn. 2020年1月、ケニア北東部を襲ったサバクトビバッタの大群。



夕暮れ時に木に集まるサバクトビバッタの群れ(前野浩太郎氏撮影)

「バッタの習性を応用し、一箇所に集める誘引技術が開発できれば、トラップで一網打尽にできると考えています。科学的根拠をもって生態を明らかにできれば、被害対策にも大きな貢献ができると思います」

殺虫剤を使わずに捕まえて、タンパク源として利用できれば、人類が直面する食料危機の問題解決にもつながるかもしれない、と前野氏は期待を込める。最後にバッタ対策支援の重要性について、改めて語ってくれた。

 「バッタ対策で一番大切なのは、『風化させないこと』です。ケニアでは70年に一度の大発生と呼ばれ、長く被害を経験していませんでした。被害がないと予算が打ち切られ、対策の経験やノウハウは忘れられてしまいます。そうして、忘れた頃にまた被害が起きるのです。

いま対策を講じなければ、被害はさらに中央、西アフリカへと広がるでしょう。現地では数年に及ぶ干ばつや大雨で食料問題がすでに起きていて、傷ついている人々がさらに深刻な危機に直面しています。サバクトビバッタは越境して被害を広げる、グローバルな問題です。多くの人にこの問題を知っていただきたいですし、研究の力で貢献したいです」
 

FAO/Mohammed Abdulkhaliq & Ameen Alghabri. 羽化したばかりの性成熟していない成虫はピンク色をしている。2〜3週間で性成熟すると黄色になり、繁殖が始まる。


まえの・こうたろう◎国際農林水産業研究センター研究員。1980年、秋田県生まれ。2008年神戸大学大学院で農学博士を取得。京都大学白眉センター特定助教を経て、現職。主な著書に『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書刊)、『孤独なバッタが群れるとき──サバクトビバッタの相異変と大発生』(東海大学出版部刊)など。

文=成相通子

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