そうした会話のなかで感じることは、今も昔も、学生たちが抱える悩みは変わらないということだ。悩みを抱えながら試行錯誤することは、今後の人生にも役立つので悪いことではないと思うが、過剰に不安や恐怖を抱えてしまっているケースも散見される。今回はそんな学生たちの悩みを解消するために、リアルな金融教育の話をしたい。
なぜ学生たちは将来に不安を?
マイナビが先月発表した「マイナビ 大学生低学年のキャリア意識調査」によると、大学低学年(1~2年生)が将来について不安だと思う上位3項目は、「お金に対する不安」が27.4%、「結婚に対する不安」が16.8%、「就職活動に対する不安」が15.2%となっている。
お金や就職活動への不安は、筆者が大学生だったときも同じであったが、さまざまなデータを合わせて見ると、いまの学生が過剰な不安を抱くのは、少し不思議でもある。
リクルートワークス研究所が発表した2020年春卒業予定の大学生の求人倍率は1.83倍となっており、依然として学生優位の売り手市場が続いている。筆者はリーマンショック後(2008年、2009年)に就職活動をしていた人にも話を聞いたことがあるが、その時に比べれば、圧倒的に就職活動自体の難易度は高くない。
また、厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査結果(初任給)」によれば、下図の様に、学歴を問わず初任給は直近5年間ずっと上昇傾向にある。それらをふまえれば、それほど過剰な不安は抱く必要はなさそうだ。
(出所):厚生労働省『賃金構造基本統計調査結果(初任給)』のデータを基に株式会社マネネが作成。
(注):2019年以前は調査対象産業「宿泊業、飲食サービス業」のうち「バー、キャバレー、ナイトクラブ」を除外している。
それでも、学生が不安になるのは、やはり世の中における不確実性が年々高まっていることや、景気の悪いニュースを耳にすることが増えてきたからだろう。しかし、そのような漠然とした不安も、正しい知識があれば、多少は和らげることが可能だ。
前出のランキングにおいて、「就職活動」と「お金」が上位3項目に入っていたが、実はこの2つは「お金」に対する不安ということでまとめられるのではないかと思う。
どの企業に就職するかは、年収がいくらになるかという「お金」の話に繋がる。もちろん、仕事の内容も気になるところではあると思うが、労働によって対価を得ることが一般的とされている世の中においては、やはり就職の際に気になるのは「お金」の話だろう。
日本では金融教育を受ける環境がないため、「お金」の話になると不安だけが大きくなり、その結果、誤った判断をしてしまったり、そもそも思考停止になったりすることが多い。
この1~2年は日本でもようやく「金融教育」という言葉を聞くようになってきたが、どうしても投資教育寄りの内容が多い。そうではなく、もっと幅広い「お金」の知識を身に付ける機会と環境を用意してあげることが、学生の不安を取り除き、自信を持たせることに繋がるだろう。
それでは、昨今の金融教育に欠けている点は何か。それは「減らさない」ことと「稼ぐ」ことだ。