商談の最初は空気が重く、お客様も本音で話す以前の状態です。そこで本音を引き出すために役立つのがアイスブレイクです。ちょっとした笑いで緊張を解きほぐせると、商談を円滑に進めることができます。
アイスブレイクには、初対面の人との空気を柔らかくする目的で使用するという認識があるかと思いますが、実は他にも2つの使い方があります。
1つ目は、社内の会議などの冒頭で用いるアイスブレイクです。本題に入る前に「今の感情」や「今週の出来事」などを共有して空気を整えてから入る。これも職場の人間関係の質を高めるためにとても効果的です。
2つ目は、商談の最初ではなくプレゼンの途中におけるアイスブレイク。プレゼンを聞き続けていると空気自体が固くなることがありますが、それを緩和するために意図的に雑談を挟むのです。
このアイスブレイクの手法を使いながら商談の中でクスッと2〜3回ほど笑わせながら本題を伝えることでお客様の本音を引き出すことができます。
ただ、「アイスブレイクしたのに空気がさらに凍りついた」「笑いが取れるときと取れないときがある」など、狙った通りに笑いを生み出せないという声をよく聞きます。
ここからはアイスブレイクの手法の前に、そもそもどうすれば笑いを生み出すことができるのか? 笑いのメカニズムについて解説していきます。
笑いのメカニズムは「緊張」と「緩和」からできている
仕事で成果を出すための行動特性として「PDCA(計画・実行・評価・改善)」があるように、笑いにもメカニズムが存在しています。
(図1)
図1をご覧ください。「緊張」した状態・状況から「緩和」する。これは全てのお笑い芸人が知っている、とても一般的で当たり前なメカニズムです。
もう少し具体的に、緊張した状態・状況から緩和する仕組みを説明すると、
緊張:取締役会議の中で
緩和:社長が屁をこいた
といった例が挙げられます。この緊張と緩和を活用して、漫才・落語・コントなど全ての笑いが狙って生み出されています。
イメージがわかない人のために、お笑い芸人がテレビでもよく使っている言葉に変換すると「フリ」「オチ」となります。ここで大事なのは、フリとオチは必ずセットで使用されるということです。
(図2)
よくある失敗例として、社長が社員向けにメッセージを伝える場面で、話を聞いている側の反応が悪いと「今、笑うところだぞ」と伝え、話を聞いている方々が気をつかって笑い出すといった場面をよく見かけます。
私は、この事象を「笑いのカツアゲ」と呼んでいます。
なぜ、そのような事象が起こるかというと、フリがないのにオチを言っているからです。誰もオチだと気づかないから笑わないのです。
フリ=共通認識、オチ=裏切りと覚えていただくとよりイメージが湧くと思います。
お笑い芸人のすべらない話の構造
実践的にどのようにアイスブレイクを話すと笑いが起こるのかをお伝えするために、お笑い芸人の「すべらない話の構造」をご紹介します。
(図3)
図3をご覧ください。
「枕詞」→「ディテール(フリ)」→「1回目のオチ」→「2度目のオチ」という流れです。
お笑い芸人はこの構造に沿って何度も「ディテール」を変えたり、「オチ」を変えたりして、ベストなシナリオを導き出していきます。
この行為をお笑い芸人の世界では「こする」といいます。これがビジネスの世界でいうPDCAとなります。お笑い芸人とは、トークやコミュニケーションに対してPDCAを回し続ける職業ということです。
例えば、図3でいうと、青いフローを「ベストなトークの流れ」として導き出したのです。