「減らさない」で「稼ぐ」。お金で人生を台無しにしないためのリアルな金融教育

baranq / Shutterstock.com


「自分の身体」という資本を減らさない


まずは「減らさない」ことについて。これには2つの要素がある。

1つは騙されてお金を奪われないようにすること。本連載コラムのなかでも何度も警鐘を鳴らしているが、いまだに学生が詐欺被害にあってお金を奪われるケースが後を絶たない。SNSやマッチングアプリが入り口となり、その後はLINEなどのクローズドなコミュニケーションツールで契約まで誘導するというから、いかにも昨今の学生を対象とした詐欺といった印象だ。

詐欺に使われる契約書も金融機関が作成したものを再利用しているらしく、一度サインをしてしまえば、被害額の全額どころか一部すらも取り戻すことが厳しい。増やすことばかりを教える投資教育ではなく、リスクとリターンの概念をしっかりと教える金融教育が必要になるだろう。

もう1つの「減らさない」は、自分の身体という資本を減らさないことだ。ほとんどの人が自分で働いて稼ぐわけだから、身体こそが「お金」を生み出す資本となる。

しかし、学生が社会人という新しい環境で頑張ろうと意気込むがあまり、精神を含めた身体を壊してしまい、ビジネスマンとしてのキャリアを諦めなければならなくなることも少なくない。限界が来る前に逃げてもいいこと、職場以外のコミュニティを持つことなどについても教えるべきだろう。

労働だけでなく、お金にも働いてもらって稼ごうとするならば、その源泉となる資金と、それを生み出す資本を減らしてはいけない。増やすことを考える前に、この点をしっかりと教えなければならない。

高い専門性と稼ぐ力を身に付けよ


次に「稼ぐ」ことだが、こちらにも2つの要素がある。1つ目は高い専門性を学生のうちから身に付ける必要性だ。国税庁が発表した「民間給与実態統計調査」によれば、日本の労働者の平均年収は約440万円。そのうち1000万円を超える人間はわずか5%だけだ。

さらに、新卒の学生が含まれる20〜24歳の年収を見ると267万円にすぎない。しかし、高い専門性があれば新卒であっても年収1000万円を提示する企業も出てきているように、知識とスキルさえ身に付けておけば、従来とは違う稼ぎ方を大学卒業時から実践することもできる。

「稼ぐ」の2つ目は、会社に頼らずとも稼げる能力を身に付けることだ。副業というと大げさかもしれないが、これほどまでにネットサービスが発達したいまだと、実は仕組みさえつくってしまえば不労所得を稼ぐこともできるし、少しの稼働でそれなりの収入を得ることも十分に可能だ。

必ずしも会社員として働くだけがお金を稼ぐ手段ではない。このように時代に合わせた新しいお金の稼ぎ方も、金融教育では教えていくべきなのだろう。

日本に金融教育の文化が根付いていくのは喜ばしいことだが、投資面だけではなく、実情に合ったリアルで幅広い金融教育を授けていくことで、学生が将来に対して過剰な不安や恐怖を抱かなくてもよい時代が来ると信じている。

連載:0歳からの「お金の話」
過去記事はこちら>>

文=森永康平

ForbesBrandVoice

人気記事