そして最近、「パタハラ」訴訟もあいついでいる。9月12日には東京地裁で、育児休業を取得したために「不当な扱いを受けた」として、スポーツ用品大手メーカーの男性社員が同社を相手に起こした裁判の審理が始まった。
これに先立ち、大手外資証券会社のカナダ人幹部が、やはり「パタハラ」で訴訟を起こしている。この裁判では、昨年7月5日に予定されていた証人尋問が「フェイスブックで注目が集まり、多数の傍聴人で混乱すると予想されるため」との理由で急きょ延期されたことも大きな話題になった。
このように日本国内での「パタハラ」への関心は高まっているほか、昨年末には12月26日の閣僚懇談会で「男性国家公務員の育児休業促進の報告」があるなど、「男性育休取得」に関する意識は強くもなっている。Forbes JAPAN Webでも現在、「男性育休100%」を宣言した企業トップ7人にフォーカスする特集「#もっと一緒にいたかった」 を展開中である。
そんな中、高校時代にスウェーデンに交換留学し、大学卒業後はスウェーデン大使館商務部勤務、その後、理想の子育てを求めて家族でスウェーデンに移住した久山葉子氏が、パタハラ訴訟を起こしたカナダ人幹部、グレン・ウッド氏にインタビューした。「グレタ・トゥンべリを生んだ国」スウェーデンとわが国における子育て事情、そしてそれを取り巻く社会の仕組みの違いを考える。
「子どもを育てながら好きな仕事を続けたいだけなのに。それっておかしいですか?」
流暢な日本語でそう言ったのは、グレン・ウッド氏だ。
グレン氏とお会いしたのは、陽がさんさんと降り注ぐ六本木のオープンカフェ。11月だというのに、とくにスウェーデンから来たわたしには、汗ばむほどの陽気だった。
グレン・ウッド氏
グレン氏の存在を知ったのは、フェイスブック上の動画だった。大手外資証券会社の機関投資家営業部の特命部長でありながら、育休を取ったことで退職を余儀なくされた。現在、会社を相手取り裁判中だという。日本ではまだ、男性が育児休業を取ることが社会から当然の権利とみなされない可能性がある──その事実に衝撃を受けた。
わたし自身はこの十年スウェーデンに住み、男性も育児休業を取るのが当たり前になってしまっていたからだ。