経済・社会

2020.01.14 18:00

パタハラ訴訟相次ぐ日本。「ハラスメントは犯罪」の意識あるか?


育児休業は480日、ただし「両方の親が取る」ことが条件

スウェーデンでは育児休業が480日あるが、片方の親しか取らない場合、そのうちの90日は消えてしまう。その政策のおかげもあって、男性の育児休業取得率はもちろんすこぶる高い(編集部注:取得率データは調査できなかったが、これはそもそも「育児休業を取得しない人」がほぼいないためとも思われる)。

実際、わたしの知るパパたちは、少なくとも3カ月~半年は育児休業を取得していて、ママが働いている間に育児と家事を一手に引き受けている。わたし自身は2010年に当時2歳になる直前の娘を連れて夫とスウェーデンに移住し、夫婦共同で育児と家事をする生活を続けてきた。男女とも基本的に残業はなく、夕方5時以降は家族が揃って過ごす。育児休業中でなくても家事育児の分担は半々だ。

そんな中でグレン氏の存在を知り、会ってみたいと思った。こんな理由で裁判を起こさなければいけないのは残念な現実だが、声を大にして「それはおかしい!」と言える人がいることに未来への希望がある。それに、なぜグレン氏はたった一人で大企業を相手に闘うことを決めたのだろうか。

「20歳の頃に初めて日本に来て、日本が大好きになりました。特に好きなのは、日本人がお互いをリスペクトするところや、助け合い精神です。素晴らしいホストファミリーにも恵まれ、今でも家族同然なんです。数週間のつもりで来たのに、結局3年いました」

そう言って笑うグレン氏。その後、アメリカの大学でMBA(経営学修士)を取得。ウォール街で大手金融会社数社に勤めたのち、2012年に日本に戻ってきた。そして今回、それ以来ずっと勤めてきた会社を相手取り、訴訟を起こすことになった。

「裁判を起こした理由ですか? 日本が好きだからこそ、変わってほしくて。それにもちろん、普通に仕事をしたり子育てをしたりしたいだけ。それが、おかしいでしょうか」

おかしくないはずなのだが、子供をもったとたんに普通に仕事をすることができなくなる可能性があるのが日本の現状かもしれない。

null

「小さな子どもがいる」ことが弱点にならない?

思えばわたしも、東京に住んでいた頃、育児休業から職場復帰したときに、仕事内容ががらりと変わったという経験を持つ1人だ。

当時、職場で子どものいる女性はわたしひとりだけで、育児休業を取得した初の社員でもあった。短時間勤務で4時半にはオフィスを去るし、子供が熱をだしたと言って急に、それも頻繁に休む。そんな社員だったので、わたしは電話を取ったり、他のスタッフのサポート的な仕事を与えられるようになった。

しかし、それで会社を恨んだわけでもなかった。初めての子育てに必死だったわたしは、その措置をむしろありがたいと感じていた。
次ページ > 「グレタ・トゥンベリ」を生んだ土壌

編集=石井節子

ForbesBrandVoice

人気記事