──これまで「mercari R4D」として取り組んできて、どのような「手応え」を感じていらっしゃいますか?
濱田:これまでのアウトプットとしては、あくまで一例ですが、スマートグラスにおける商品情報表示方法に関して、特許を取得しています。また、「もし、メルカリがブロックチェーンで動くとしたら」というコンセプトのもと、「Mercari X」というプラットフォームを開発し、研究しました。さらに、2018年11月にJAXA(宇宙航空研究開発機構)とパートナーシップを締結することによって、衛星データを活用した共同研究も実施しました。今までは、議論を発散させるフェーズということもあって、様々なカテゴリで研究開発に取り組んできましたが、これからは、より特定の領域にフォーカスした上で、研究を進めていければと考えています。
──まだまだ取り組むべきことは多いでしょうか?
濱田:そうですね。ここ10年で、スマホを使ってワンクリックでモノを簡単に購入することができるようになりました。その一方で、「売る」ということについては、まだまだ進化する余地があると考えていまして、我々としては、この「売る」という行為をもっともっと簡単にしていきたいと考えています。それと同時に、「世の中に、モノってそこまで必要ないんじゃないか?」「シェアの考え方が普及していけば、モノの価値が高まったり、耐用年数が高まったりすることで、無駄な資源を使わずに済むのではないか?」ということも考えていまして、いずれにせよ、我々としては、この「売る」という行為をより簡単で身近なものにしていくことによって、新たな「価値交換」のあり方を提示していきたいと考えています。
川原:我々の狙いは、「価値交換」という切り口から研究に取り組むことによって、今、思いもしないような新しいスキームであったり、それを支えるための情報インフラを作り出すことにあります。それを達成することがこのプロジェクトの一旦のゴールであると個人的には考えています。
研究者は「競争疲れ」している
──来年の1月から開始ということですが。
川原:はい。昔、コンピュータサイエンスに関する新技術開発を目的として米ゼロックスによって設立された「PARC」と呼ばれる研究施設がありました。イーサネットやGUIといった重要な概念がその研究施設から数多く生まれたことで知られているのですが、このような形で、未来に必要なものをバックキャストで描いて、自由な発想で研究していくことができるような存在となることができればと考えています。