ベンチャーは資金をどう集めるべきか。起業家に必須のマネー知識とは

Sarinya Pinngam / EyeEm(Getty Images)

筆者は金融教育ベンチャーを経営すると同時に、複数のベンチャー企業のCOO(最高執行責任者)やCFO(最高財務責任者)などを兼務している。

資金調達をする度にプレスリリースを出しているせいか、最近はこれから起業する、または既に起業して1~2年経ったという若い人達からお金周りの相談を受ける機会が増えた。全員意識も高く、能力もあり優秀な印象を受けるが、一方でお金の話になると急に頼りなく感じることも多い。今回は未来の起業家に向けた金融教育について書いていきたい。

未来の起業家のための金融教育とは?

この5年ぐらいで起業が非常に身近になった。筆者が就職活動をしていた時期は、まだ起業というと「リスクが高いからやめなさい」と言われ、周りにも20代で起業しているような人はいなかったが、最近では大学卒業後や、在学中に学生起業する人も増えている。

前述の様に若い起業家達から相談を受けると、自社のプロダクトやサービスに関する知識や情熱は素晴らしいのだが、お金周りの知識が極端に欠落していると感じることが多い。せっかく有能な若い人材が新しいプロダクトやサービスを世に出そうとしているのに、お金が原因となって、夢を断念せざるを得ないケースもある。

2022年に高校の家庭科で金融教育を導入するというニュースが発表されたが、その内容はライフプランニングと資産形成だ。筆者は常々主張しているが、金融教育は必ずしも資産形成だけを指すべきではない。そこには経済学や統計学、簿記のような企業会計、そして税金周りや会社の仕組みなどを幅広く教えるべきだ。

未来の起業家のために、筆者が提唱する幅広い内容の金融教育を受ける環境が日本でも用意されることが望まれる。それでは、実際に相談を受けた際のエピソードを交えて、いくつか紹介していこう。

お金をどうやって集めるのか

起業したいという情熱があり、手掛けていきたいサービスも具体的に考えている。一緒にやってくれるパートナーも見つかり、あとは登記するだけだ、という若者がいた。事業内容を聞いている限りだと、たしかにうまくいきそうな気もしてくるが、一方でそれなりのコストもかかりそうだ。

そこで、聞いてみた。「お金はどうするの?」と。すると、かなり軽い感じで「銀行から借りますよ。そんなにお金持ってないですから」とあっさりと答えた。

何も実績のないベンチャー企業に大金をポンっと貸してくれる銀行などなく、日本政策金融公庫から1000万円借りて、あとは補助金を申請して足しにするぐらいしか方法はないだろう。そのことを話すと、「そんなことないですよ。このベンチャーなんて創業数年で何十億も調達してますよ」という。そのベンチャー企業が出したプレスリリースを見ると、ベンチャーキャピタルから資金調達をしていた。

そこで、世の中にはデットファイナンス(融資)とエクイティファイナンス(株による調達)があることを説明した。すると今度は「株を渡せば、そのお金は返さなくていいんですか?」と嬉しそうに聞いてくるので、今度は株式の保有率によっては支配権を奪われることなどを説明した。

たしかに、過去には早々に株式の大半を、エンジェル投資家を名乗る年配の方に渡してしまっている若い経営者を見たことがある。結局、お金の知識がないと、優秀な若い才能が食い物にされてしまうのだ。
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文=森永康平

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