ヒゲ剃りなどの男性向けグルーミング製品を販売する企業だ。
創業からわずか5年で、ダラー・シェーブ・クラブの企業価値は10億ドルにまで膨らみ、アメリカでも最大クラスの「パーソナルケア」ブランドへと成長した。今では、この分野の大手ブランドであるジレット(Gillette)やシック(Schick)を脅かす存在だ。
実はダラー・シェーブ・クラブは、実店舗では商品を全く販売していない。それなのに、これほどの急成長を遂げたことに驚きを感じる人もいるだろう。
ダラー・シェーブ・クラブのヒゲ剃りやアフターシェーブローションは、ウォルマートやターゲット、コストコといった小売店では購入できない。さらに言えば、「実世界」で同社の製品を買える場所はない。同社は、販売ルートをインターネットに限定しているからだ。
しかし本当に驚きなのは、もう1つの事実だ。
実は、ダラー・シェーブ・クラブは、製品をアマゾンで販売していないのだ!
実店舗での販売をやめるだけでなく、オンライン販売のチャンネルに関しても、アマゾンを見限る企業は増加の一途をたどっている。そして、このトレンドを裏で牽引する、知る人ぞ知るテック界の大企業が存在する。
この企業は、すでに小売業界で世界第2位にまでに成長し、1位のアマゾンをじりじりと追い上げている。
現時点でも、商品を購入するアメリカ人のうち3人に1人が、知らず知らずのうちにこの企業を利用している。テスラの電気自動車も、この企業のシステム経由で販売されているほどだ。
この記事の後半では、同社の株価情報をご紹介するが、まずはその前に、同社も関わっている、小売業界を揺るがす巨大な変化について解説しよう。
「中間業者」の排除が進む小売業界
ダラー・シェーブ・クラブの成功の秘密は、ごく単純だ。自社のヒゲ剃りを直接消費者に販売し、流通や販売を取りもつ中間業者を排除したことが、同社の成功につながった。
同ブランドの製品を購入するには、同社のウェブサイトで注文するしかない。これはオンライン直販と呼ばれる手法だ。
現在の小売業界では、あらゆる製品カテゴリーにおいて、実店舗からオンラインでの直接販売へと切り替えが進んでいる。
現在、消費者への直接販売は、アメリカにおける全販売額の15%程度だ。だが、デジタルコマース360(Digital Commerce 360)によれば、こうした直販は、実店舗販売の5倍のスピードで急成長している。一方、実店舗での小売業は行き詰まっている。
実店舗が次々と閉店に追い込まれる一方で、オンラインストアは雨後のタケノコのように次々と登場しているのだ。