価格の決定要因は需要と供給
今度はいかに値付けをするか、という話題になった。複数ある競合のプライスリストが既に用意されてあり、「安く売れば勝てる」という。しかし、そこの見通しもあまいのだ。
人件費や原材料価格の合計に利益分を乗せた価格が店頭での価格になっているが、大手は大量発注をして原材料価格を下げるなど、価格交渉力を持っているが、ぽっと出のベンチャーが同様の交渉力を持つとは思えない。
そこで、人件費や設備費用を下げて対応すると、その分、成果物の質が劣化する可能性がある。安くても質が低いのなら、それはほとんど売れないだろう。そもそも、大手が競争のなかでつけた価格に対して、更に競争力を持つ安い価格を打ち出すためには、新しいテクノロジーでこれまで不可能だったことを可能にする必要がある。
今度は市場の価格がどのように決まっていくのか、という経済学でいうところの「需要と供給」の説明をした。一般的には需要と供給が一致する点で価格が決まるため、その価格以外の値段で商売をするには、何かしらの理由が必要だ。たとえば、現在の市場価格より高い値段で売りたいのであれば、需要を増やすか、供給を絞るしかない。
そこを理解したうえで、需要を増やすためには何をしたらいいのか、と考えると広告を売ったり、プロモーションのためにイベントをしたりと、ファンづくりのための告知が必要になるという話になった。そうなると、いま計算していた以上にお金が必要になるという結論に至った。
いかにデータと細かく付き合うか
起業をする際に、どれほどのお金が必要になるのか。このビジネスはどれくらいの費用が必要で、成功するとどれだけ稼げるのか。こういうことを事前に計算する人がほとんどだと思うが、その数字のつくり方もコツがある。売上高やコストについては、すべてを因数分解することだ。細かければ細かいほど良い。そして、公表されているデータはなるべく多く参照すること。それは企業や国が発表しているオフィシャルなものだけを使う方がいい。
どういうことか分からない人にはこのように考えてほしい。あなたが素晴らしいアイディアを持っていて、投資家に出資してもらおうとしたとき、「このビジネスはいくら儲かるんだ?」と聞かれたら「〇〇円です。」と答えるだろう。すると、「その根拠は?」と聞かれるはずだ。
そのときに、答えに詰まるのは論外だが、属する市場の大きさ、想定している単価、既存・潜在顧客数など、様々な数値から数字を積み上げて計算しておけば、それぞれについて説明していけば説得力のあるプレゼンとなるだろう。
このように、ビジネスをしていくうえでは、お金の話を避けることはできない。将来の起業家がお金を理由に夢をあきらめる必要がないよう、ビジネスをベースにして幅広い金融教育を受けられる環境が整備されるようになってほしい。
連載:0歳からの「お金の話」
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