大手企業の傘下に入るか、それとも挑み続けるかだ。
近年ではようやく日本でもスタートアップが生まれやすい、すなわち既得権益に挑みやすい土壌が整ってきた。少なくとも私が日本に在住していた2013年の時点では、学生起業家がバリュエーション1億円でシード調達することは滅多になかった。
私はシリコンバレーと東京を拠点に投資家・企業の評価サービス「datavase.io」を運営し、さまざまな企業分析、ファンド分析を実施している。中でも投資家の評価データは多くのシード起業家が利用し、資金調達に挑んでいる。
この連載では、同サービスの管理者だからこそ共有できる知見を提供したい。
銀行口座開設よりも資金調達がフラットに
私は日米で会社の創業経験がある。米国では法人登記する前から、銀行側から「銀行口座を作らないか、お金を借りないか」といったアプローチをしてくるが、日本では登記して売り上げを確保しても、メガバンクの口座を開設することができなかった。
一方、米国ではプロダクトがなければ、投資家から資金調達することは極めて困難であるが、日本ではプロダクトがない状態でも投資家側からアプローチをしてくることがある。私もプロダクトがない学生時代に投資家から連絡をいただいた起業家の一人だ。
また著名投資家より投資契約を締結し資金調達することが確定していても、メガバンクで口座開設することができず、着金が半年間遅れるというスタートアップにとって極めて困難なハードシングスをシード期に体験したことがある。つまり、経験則から言うと日本では銀行の貸し入れよりエクイティファイナンス(株式による資金調達)の方が極めて難易度が低い。
今回はシード期における資金調達のイロハを伝える。今さら聞けない基礎知識として一読いただけると幸いである。
#1 資金調達をする目的、投資側のメリット
一般的に資金調達を実施する目的は、企業/プロダクトの急速な成長を促すためである。
逆に言うと、スモール型ビジネス(安定的な売り上げを伸ばしていく受託業務)を行う会社は、急激な成長を求めないため資金調達を要さないことが多い。資金調達を必要とする企業はサービスの大幅なスケールをするために、初期段階で広告費用や開発費用に大幅な赤字を掘る覚悟がある企業といえる。