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2019.06.13

拝啓、次世代の起業家へ。今さら聞けない資金調達の基礎知識

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#3 誰からお金をもらってはいけないか

一方で、「誰からお金をもらってはいけないのか」を考えることも重要だ。

大手企業のCVCから調達する場合は、競合サービスをする可能性はないかを吟味する必要がある。

また、VCから投資を受ける場合でも、安心はできない。VCは複数のLPから調達したファンドによって成り立っている。だから、VCはLPに投資先の情報公開をする可能性がある。自社の競合がVCのLPに入っており、情報を抜かれているといったケースも少なくない。

一例を紹介しよう。私の知人で事業会社から資金調達したものの、着金して1カ月後、同事業会社が全く同じコンセプトの事業をリリースしたケースがあった。これにより事業会社のファンドとしてのレピュテーションは落ちるが、投資契約書上、競合となり得るサービスを停止する義務はなく、法的拘束力はないだろう。起業家は誰に情報を抜かれてはいけないかを熟考しなければならない。

また投資を受けた後、連絡がとれなくなる投資家は避けるべきである。投資してもらうだけではなく、自分の会社がエグジットするために、いかにコミットしてもらうかは起業家の惹きつけ力次第である。

#4 いくらお金をもらうか

あくまで資金調達における基礎知識であり、それ以上知りたい方は個別に相談していただきたいが、いくらお金をもらうかは、資金調達をする際にもっとも慎重を期したい。たった1%の放出の誤差でエグジット時に数億円の差まで膨れ上がることがある。起業家は自社の成長にとっていくら必要かを計算し、必要最低限の資金を調達するべきだ。上場時に創業者の持ち株が数%しかないというのはよくある話だ。

こちらもある例を挙げよう。グノシーの上場時の代表取締役の株式比率は3.53%であった。また、インキュベートファンドのように、VCによっては株式比率をシード時から約50%取得し共同創業的な立ち位置で会社をサポートすることを正義とするファンドも存在する。

これはインキュベートのような手法を採るVCが悪いわけではなく、むしろ事業推進スタイルとして、成功例の一つである。グノシーに関しても、これが悪いわけではなく木村新司さんの才覚によって伸びた面もあるため、良い成功例だと言える。その株取得保有数の良し悪しを決めるつもりはないが、エグジット時に何パーセント所持していたいか、どういう未来を描きたいかを起業家は調達前に繰り返し考えなければならない。

何が問題かというと、株式をいくら放出するのかという資本政策をよくわかっていない企業側である。わかっていれば、何を選択するかは自由なのだ。

#5 バリュエーションをどう定めるか

シードラウンドのバリュエーションをどう定めるのか、資金調達を実施した経験のない起業家にとっては極めて難しい課題である。私はVCの口コミサイトを運営しているが、資金調達後に後悔している起業家はある程度決まっている。初めて会った投資家から資金調達を決め、調達後に自身のバリュエーションが低く見定められたことに気づく起業家だ。
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文=戸村光

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