NIKEと共に「前代未聞」の展示を実現した、小さなアートギャラリーの矜持

平山昌尚「8388」



加賀美健「エアー ホース ワン! 2019」

──ギャラリーとしての戦略は?

カジュアルさと権威性のバランスを取ることです。有名な方とご一緒するのは誰でも思いつくこと。十分に世に伝わっていないアーティストをフックアップすることができなければ、ギャラリーの意味がありません。信頼を得ながら、新しいものを提案していく。そのバランスを意識しました。

アートギャラリーは、敷居が高くてお金持ちしか近寄れないというイメージがありますが、VOILLDには若い子が買える作品もたくさんあります。目線を上に持ちながら、砕けた部分も提示することを大切にしています。



──伊勢さんは、今後アートとビジネス・経済が関わり、交わることを推し進めるべきだと思いますか?それとも、アートとしての純度を保つという方に目を向けますか?

後者ですね。日本のアート市場はまだ成熟していません。逆に考えると、日本のアーティストが日本で展開している作品はまだまだ手に入れやすく、アートとして純度が高いんです。

そんな状況だからこそ、VOILLDは重要な役目を担っていると思っています。主に100万円以下の作品を扱っているのですが、投資的な観点のお客さんより「好き」という感情を大切にして作品を購入する人がほとんど。

これは、ギャラリーにとっても、コレクターにとっても、作家にとっても、ピュアな在り方なんですよ。数千万、数億を超えるようなアート市場が決して悪いわけではないのですが、そこには様々な事情が乗ってくるので、純度は低くなってしまうんですよね。


UFO907「WEST 4th」

──私たちはどのようにアートを楽しめばよいのでしょうか?

そこにあるものを「面白い」と感じることですね。花って美しい。犬ってかわいい。アートってかっこいい。自分の感情を大切にすることが第一だと考えています。また、アートは時代や社会の変化とともに、姿形を変えて、さまざまに楽しむことができます。社会の鏡のような側面もあるんですよ。

若い世代のお客さんには、「2万円なら買えるじゃん!」って気軽に作品を手に取ってもらいたいし、時間が経って大人になったら、「この作品、50万円するけど新居に置くか」みたいに購入してもらえたら、こんなに嬉しいことはないです。まだ5年目ですが、お客さんと一緒にVOILLDも成長していて、それが少しずつ叶っているのが喜びです。まずは、本当に気軽に作品を見に来てほしいですね。

文=長島太陽 写真=池野詩織

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