ライフスタイル

2019.11.29 17:00

NIKEと共に「前代未聞」の展示を実現した、小さなアートギャラリーの矜持


──クラブって、未成年は入れないですよね?

当時は今よりもゆるかったんですよ。ただ、グレたわけではないんです。「今日はクラブに行ってきます」「わかりました」みたいに親にもきちんと報告して、まじめに遊んでいました。クラブカルチャーは上下関係がしっかりしていて、いま思えば社会でのサバイバルスキルはそこで学んだかもしれません。アートギャラリーを運営する上で大事なことは、ヒップホップが教えてくれましたね(笑)


マルヒロ×竹内俊太郎「陶磁器製エアーフォース1」

"近年まれに見るひどい展示"から広がった認知

──そこから、現在のアート領域での活動にどうつながっていくのでしょう?

専門学校を卒業し、作家さんの作品や商品を扱うお店での営業などを経て、とあるアートブックのレーベルにお世話になりました。企業とアーティストをつなぐ代理店業務も兼ねていて、5年務める中で、様々なアーティストやクライアントの間に立ってプロジェクトを推進してきました。

双方にとって100パーセント良いプロジェクト実行するのは難しく、アーティストをまっすぐ支援できる仕事って何だろうと考えているときに、いまVOILLDがある建物の地下スペースの持ち主から「ここで何かやらない?」って連絡があったんです。



──それでVOILLDが生まれるわけですね。人との繋がりによって仕事がどんどん広がっている印象です。

人には恵まれていると思いますね。VOILLDはBガールマインドのある名前で、”VOID”(空間・空虚)という言葉の間に、「かっこいい」とか「ヤバい」という意味のスラング ”ILL”が入っているんです。これは海外の人に説明してもみんな褒めてくれます。立ち上げた当初は、アーティストとのつながりはあったけど、ギャラリーを運営する知識は何もなくて本当に大変でしたね。

人は来ない。どう作品を展示していいかもわからない。作品をどう梱包して、どう売っていいかもわからない。すべてわからないわけです。そんなときに加賀美健さんと出会って、色々教えていただきました。

14年、VOILLDがオープンして数ヶ月後に開催した「SSS」という展示が転機かもしれません。「なんでもいいからやってください」って話をして、加賀美健さん率いる8名のアーティストが参加してくれました。

本当に好き勝手してくれて、VOILLDの壁は上下左右落書きだらけ。まさにカオスな展示で話題になって、そこで認知がバッと広がりました。「近年まれに見るひどい展示」というキャッチフレーズがついていましたね(笑)。加賀美健さんは本当にキーマンというか、VOILLDの父のような存在です。
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文=長島太陽 写真=池野詩織

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