ライフスタイル

2019.10.24 16:30

6人のクリエイターが示す「次なる仏壇」の形 創業190年・京仏具の挑戦

板坂諭『animus』。この色合いに注目してほしい

板坂諭『animus』。この色合いに注目してほしい

人々のライフスタイルの変化とともに姿を消しつつある仏壇。もしも、第一線で活躍する建築家やデザイナー、彫刻家たちが、現代の暮らしに合わせて、新たな仏壇の形を作るとしたら──。私たちの想定を鮮やかに裏切るプロジェクトが始まっている。

来年、創業190年を迎える京都の仏壇・仏具メーカー「若林佛具製作所」が、6人の気鋭クリエイターたちとともに、新しい仏壇を提案するプロジェクト「レゾンデートル」の1stコレクションを発表した。

参加したのは、プロダクトデザイナー倉本 仁、彫刻家の名和晃平、建築家の永山祐子、インテリアデザイナーの橋本夕紀夫、建築家・プロダクトデザイナーの板坂 諭、デザイナーの眞城成男の面々だ。


(左上から時計周りに)橋本夕紀夫、板坂諭、倉本仁、永山祐子、眞城成男、名和晃平

プロジェクト名の「レゾンデートル」とは、フランス語で「存在意義」。プロジェクトはまず、仏壇の存在意義を問い直すことから始まったという。

仏壇は、漆塗、金箔、蒔絵、彩色などが施され、究極の工芸技術の集合体とも言える。京都には、仏具にまつわる職種が40を超えて存在している。クリエイターたちは、実際に京都を訪れ、木地師、彫師、塗師、蒔絵師など、それぞれの技術を持つ複数の職人とともに、新たな仏壇を仕上げた。

21日に都内で開かれた発表会では、若林佛具製作所の若林智幸社長が「仏壇がある家がとても少なくなり、ここ10年で仏壇仏具の考え方、つまり『祈りの対象物』、『手を合わせる存在』が変化してきました。職人さんの技術をふんだんに使い、クリエイターの皆さんに新たな祈りの形を考えていただきました」とプロジェクトの目指すところを述べた。

クリエイターたちの作品を紹介していこう。

まず、プロダクトデザイナー倉本仁の『祈像』は、位牌や遺骨などを入れることができる磁器と木彫りのケースの形となった「仏壇」だ。

プレゼンテーションとして発表されたのは、木地を生かして全面に隆々とした龍の姿が掘り出されたものと、優美な鶴が掘られた鮮やかな朱色と金箔が施された2種類。雰囲気は違うが、ケースの下部には蓮の花が重なり合う模様が装飾されている。色合いや装飾の組み合わせは、故人の雰囲気に合わせてカスタマイズでき、ターゲットは「仏壇は必要ないけれど、これなら欲しい」という人たちだという。


倉本仁『祈像』

倉本は、金沢美術工芸大学を卒業し、家電メーカーのインハウスデザイナーを務めたのちに独立。モダンなスタイルの家具や家電製品などを手がけており、「普段の仕事とは逆のベクトルで、びっくりするほど装飾を詰め込んだ」と作品を紹介。彫師や彫金師とのコラボレーションを通じて、「それぞれの職人さんの個性やテイストを生かし、色使い、装飾をデザインした」という。


倉本仁『祈像』

「通常のプロダクトデザインの場合は、合理主義やシンプル、ミニマルといった価値観が大事だと学び、そうしてきたが、一度それらをすべて忘れて、いかに殻を破れるかを考え、創作しました」と語った。


倉本仁『祈像』
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文=督あかり 写真=若林佛具製作所

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