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提供:hotel zen tokyo

元コピーライターの建築家が挑むホテルづくり

東京・人形町に“泊まれる茶室”をコンセプトにしたカプセルホテルが誕生する。ホテルの企画開発・運営を行うホテルスタートアップのSENによる初のホテル「ホテル・ゼン・トーキョー(hotel zen tokyo)」だ。中心価格は6000円〜1万円で、開業は4月上旬を予定する。


SEN代表取締役 各務太郎

「ホテル・ゼン・トーキョー」を設計した各務(かがみ)太郎 SEN代表取締役は早稲田大学理工学部建築学科を卒業後、電通でコピーライター・CMプランナーを務めた人物。各務は「建築家は建物を作ることが最大の目的ですが、その後建物がどうやって街と関わっていくのかを考えるのは広告的なアプローチ。建築前後を理解できる建築家になろうと、建築学部を出て電通へ入社しました」と話す。

「商品のコンセプトにあわせて、言いたいことを絞っていくのがコピーライターの仕事。何をどうやって伝えるのか、これはまさに建築と同じアプローチでした。起承転結のあるCM製作も、入り口から出口にいたる建物と同じで、シナリオを作る作業は非常に似ていたんです」。

“泊まれる茶室”が生まれるまで

2014年、東京オリンピックの開催決定を機に、建築家として都市の問題に向き合いたいと考えた各務は3年間務めた電通を退社。2015年に渡米し、ハーバード大学デザイン大学院で「極小空間」の研究に打ち込んだ。

「東京や香港、ニューヨークといった大都市では地価が上がり、地方に住まざるをえない課題がありました。そんな課題に対して『極小空間』を活用すれば都心部に比較的安価で住むことができるのではないか。そこに可能性を感じたんです」。


ミニマムなホテルの外観(提供:hotel zen tokyo)

日本は「極小空間」先進国。中銀カプセルタワービルに代表される、黒川紀章が生み出したカプセル型の居住空間を皮切りに、ネットカフェなど狭くて心地のいい「極小空間」が日本にはたくさんある。そのルーツを探っていた各務は、千利休による「茶室」という日本文化にたどりつく。

「広い空間を求める西洋とは異なり、茶室は狭ければ狭いほど自分と向き合うための余地が生まれる珍しい空間です。海外からの観光客は日本文化としてのミニマルな空間に価値を見出すはずだと考え、“泊まれる茶室”というコンセプトが生まれました」。

かつての東京オリンピック同様、2020年を契機にあらゆるインフラ整備が整い、以後も観光客が増加するといわれる一方で、民泊規制によってビジネスホテルに宿泊する観光客が増えているそうだ。

彼らは本当は日本らしい旅館に宿泊したいと考えつつも、東京から距離があって言語などの外国人対応が追いついていないという課題もあり、実際に旅館を利用する訪日客はごく一部。こうした社会背景もあいまって、「低中価格帯で日本文化の精神が伝わるホテルを作りたい」と2018年1月に創業したのがSENだった。

「ホテル・ゼン・トーキョー」は、いたるところで一般的なカプセルホテルとは一味違う印象を受ける。例えば、カプセルホテルといいながらもカプセルの高さは2メートル。78部屋あるカプセルの大部分にはセミダブルベッドを設置しており、部屋の幅が1.2〜1.4メートルもある。極小空間とはいえ「茶室」という体験価値を提供するために、あえて余白を残したのだ。


高い天井のおかげで広々感じる部屋内(提供:hotel zen tokyo)

また、2〜5階の宿泊フロアでは、カプセルのサイズが画一ではない。普通は海外で製作した統一サイズのカプセルをうまく配置できるよう新築物件を建てることが多いが、「ホテル・ゼン・トーキョー」では、かつて料亭だった地下2階地上5階建てのビルをリノベーションしている。建築家でもある各務が自ら最大限立地を活用できるよう5種類のカプセルを設計して設置することで、最大限フロアを活用できるように試行錯誤した結果だ。

文・写真=角田貴広

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