各階にはテーマが与えられた。キッチン、物流、農業、ビジネスなど、さまざまな観点から、会社がイノベーションに取り組んだことが見て取れる。1階はキッチンで、マクドナルドの使命のひとつ「すべての良い物はキッチンからやってくる」を具現化している。
それぞれの階のテーマを見てみると、2階はビジネス研修、3階は環境にやさしい農業、4階は世界の味に焦点を当てている。5階はパッケージデザイン、6階はマクドナルドと子ども。7階は企業理念のミッションステートメント、8階はマクドナルドの殿堂。屋外のレクリエーションスペースは風景が都市の眺めにとけ込み、空に手が届きそうだ。
マクドナルドのイメージカラーであるイエローゴールドとポイントレッドはインテリアに欠かせない。椅子は意図的にありふれたものを避け、多様なデザインや色のものを混ぜているが、やり過ぎではない。最近のオフィスデザインのトレンドである、すべての空間に統一感を持たせ、整然とした雰囲気にしようとしていることが見て取れる。
さまざまな色を取り入れるコンセプトが目を引くが、ブランドのアイデンティティはしっかりと根底にある。
ラウンジには、温かみを感じさせる木でできたマクドナルドのシンボルのM型アーチ、殿堂に続く階段はスチールを使い、ダイナミックな変化を表現している。天井からは大小の円がしだれ柳のように垂れ、空から落ちてくるハンバーガーを思わせる。いたるところに大きな揚げ網やフライドポテトの箱が飾られ、階段は丸いハンバーガーの形と細長いポテトの形を組み合わせた幾何学模様になっている。
歴代のおもちゃを全て展示
「喜びを届ける企業」を標榜するマクドナルドは、思い出にも理解があるようだ。多くの親は1度や2度は、子どもに「ハッピーミール(日本ではハッピーセット)」を買ったことがあるのではないだろうか。ハーバーガーのセットにアニメのキャラクターのおもちゃがついていて、子どもたちには大変な人気だ。
「ハッピー・ミール・トイ・ウォール」は6段になった壁で、共通の思い出の世界に連れて行ってくれる。広告に使われたハンバーガー製品のデザインが壁に彫りこまれている。ここはマクドナルドの本社であると同時に文化の中心であり、学校であり、歴史博物館でもある。
歴代のおもちゃが展示された「ハッピー・ミール・トイ・ウォール」。写真:マクドナルド