ビジネス

2019.11.04 12:00

シカゴにできた「ハンバーガー王国」 マクドナルドのオフィス拝見

マクドナルド本社の「ハンバーガー大学」の入り口。ここは店舗スタッフの教育機関だ。写真:マクドナルド

オフィスデザインにおいて、ブランドのアイデンティティを最も象徴的に表現する方法は、販売している商品の特徴を全面に押し出すことだ。でははっきりとしたコーポレート・アイデンティティを持つ企業がリノベーションを行ったら、どのようなオフィスになるのか? 

米国マクドナルド本社は昨年、世界最高のフラッグシップ店を併設するオフィスに移転し、韓国マクドナルド社も今年2月にソウルのチョンノタワーに落ち着いた。このマクドナルドオフィスリポートを2回にわたってお届けする。


色彩心理学によると、黄色は強いエネルギーを持つ色だ。生き生きとしていて新鮮。あたたかく明るい光を感じさせる。フィンセント・ファン・ゴッホはこう言った。「黄色は実にいい色だ。太陽の光を象徴している」。何より、黄色は注意を引きやすい。

マクドナルドは黄色の強さをマーケティングに利用し、成功した企業だ。大文字のMを「ゴールデンアーチ」と呼ばれるロゴマークにしている。同社は現在、世界120カ国に3万7000店舗を展開。店舗の従業員数は150万人。マクドナルドはフランチャイズ業界の「神話」とさえなり、創業者の物語は2016年に映画化された(『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』)。

4万4593平方メートル、9階建て「Mの王国」

時代の変化にさらされたこともあった。2000年代、ダイエットとエクササイズが流行し、健康志向が広まったときは「ジャンクフード」のレッテルを貼られた。逆風は続き、類似の同業他社やホームメードバーガー店との競争も激しくなった。

しかしマクドナルドはプレミアムサラダやハッピーミール、マックカフェ、マックバーガーの強さで1位の座を守った。世界人口の1パーセントがマクドナルドの商品を購入しており、その経済的影響力は無視できない。

マクドナルドが「文化」となりつつあるアメリカでは、さらなる英断が行われた。47年間、実に半世紀近く維持していた本社の初移転だ。イリノイ州のオークブルックから都心へ。新しいロケーションとして選ばれたシカゴのウェストループはアメリカ中西部の中心地で、流行の先端だ。マクドナルドは、有名なテレビ番組「オプラ・ウィンフリー・ショー」の収録現場として知られていた「ハーポ・スタジオ」を取り壊し、4万4593平方メートル、9階建てのビルに建て替えた。

昨年オープンしたマクドナルドの新社屋は誰の期待も裏切らなかった。新たなオフィスの主要コンセプトは「未来」。マクドナルドの過去、現在も、未来とともに、さまざまな形で表現されている。

「ハンバーガー大学」は、1960年代にマクドナルドが創立した店舗スタッフの教育施設だ。金色のフレンチフライが飾られた入り口は、マクドナルド本社への入り口のひとつ。ここは1階のハンバーガー王国だ。


マクドナルド本社のワークプレイス・カフェ。仕事をしながらリラックスできる。写真:マクドナルド

マクドナルドの本社は、従業員が共通の目的のために集まれる場所になっている。アメリカ最大の建築設計事務所「ゲンスラー」が設計した建物に、内装デザインのグローバル企業「IA Interior Architects」と「Studio O + A」が内装を施した。ちなみに「Studio O + A」は、フェイスブック、ナイキ、ウーバー、Yelp、そしてマイクロソフトのオフィスも手がけている。

問題になったのは外観だ。マクドナルド本社は、以前は郊外の大学のキャンパスのような建物だったが、シカゴでは縦長のビルにした。プロジェクトチームは、そこが設計上最も難しく、「それぞれの階を旅しながら物語を紡ぐがごとく」デザインしたという。
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文=Veronika Ruppert 翻訳=笹山裕子/トランネット 編集=石井節子

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