両社はどのようにして、それを実現してきたのだろうか。その要因となっているのは、どちらも立地とブランディングに強みを持っていることだ。これらは、両社にとって最も重要な優位性だ。
マックとスタバはそれぞれの市場にいち早く参入した「先行者」だった。そのため国内でも外国でも、最善の立地、つまり駅やバスの停留所、街のランドマークに近い場所、空港内などに場所を確保することができた。米国でもその他のどの国でも、マックとスタバは大抵、「すぐそこの角」にある。
そして、両社はどちらもブランディングに成功している。どのような事業を展開している企業か、どのような特徴があるのか、広く知られている。
マックとスタバはこれらの2つを手に入れたことで、(買い手が売り手を選ぶ余地がない)「専属市場」を作り出した。その優位性が、消費者の好みの変化や競争の激化、市場の飽和といったここ数十年間の数多くの変化の中でも、両社が存続することを可能にしてきた。
両社に必要なのは、提供する製品を調整し、新たなトレンドに対応することだけだ。
マクドナルドの経験
マックは1960年代、安いメニューを素早く提供することで、10代になった人口の多いベビーブーマー世代や、社会に進出し始めた女性たちのトレンドに乗った。
そして、1970年代から1980年代にかけては、「アメリカン・ウェイ・オブ・ライフ」を世界各国に広めることで、グローバル化のトレンドに乗った。また、同社は当時、進出した各国で、それぞれの社会的状況に合わせたフランチャイズ化を推進した。
1990年代から2000年代初頭には、食品業界の新たなトレンドに合わせて商品のポートフォリオを変更。店舗の改装も進めた。その後も質の高いコーヒーや健康的な飲み物、朝食の提供を開始するなど商品の幅を広げ、スタバや各地の地元の飲食店と競い合っている。
スターバックスの経験
一方、スタバは自らつくった市場の変化に対応するため、店舗の立地とブランドの優位性を十分に活用してきた。
1990年代、働く中年層は「手の届くぜいたく」を味わうことができる「第3の場所」のニーズを生み出した。スタバはこれに対応。同業のどの店舗よりも迅速に、そして巧妙に、都市部に店舗を展開した。そして、欧米の企業が自社ブランドを消費者に売り込む方法を永遠に変化させた。
同社は最近では、従来の自社の市場に進出してきたマクドナルドと競争するため、朝食のメニューを加えるなど、より幅広い商品を提供するようになっている。また、カフェインを含まない飲み物を好む顧客にも対応するため、新メニューの開発を継続。その他、全般的な顧客体験の向上を目指し、テクノロジーの導入も進めている。
マクドナルドとスターバックスの今後に必要なのは、それぞれをトップに押し上げた優位性を生かすために、適切な商品を開発し続けることだけだ。