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2019.11.05

ジェフ・ベゾスが「アイスベアの骨格標本」に秘めた決意|シアトルイノベーションツアー第3回

Getty Images

アメリカ北西部の最北に位置するワシントン州の州都、シアトル。今はアマゾン、スターバックスといった多くの世界的企業がひしめく、アメリカでももっとも成長著しい街である。

アマゾン ジャパン立ち上げメンバーの一人である筆者が、日本経営合理化協会主催の「シアトルイノベーションツアー」団長としてこの地を訪れたのは、令和元年を迎えたこの6月のことだった。

第1回「専用機で運ばれるアマゾン プライム会員向け貨物」、第2回「ベゾスが『アジェンダを破り捨てた』伝説の会議室」に続き、今回はシアトル訪問3日目、ツアー前半の山場とも言うべき「アマゾン・デイ」、アマゾンの「リアル店舗展開」についてレポートする。


「アマゾン・ゴー」で擬似万引き体験

次に訪れたのは手狭になった「パックメッド」から本社を移した「サウスレイク・ユニオン」地域。旧「デイ・ワン」ビルディングという本社ビルを中心にした10棟のビル群、今でもオペレーション部隊などが入る地域だ。

そのビルの奥にひっそり佇む「アマゾン・ゴー」は、アマゾンが全米に拡大しようとしているリアル店舗の新業態、レジなしの店舗だ。

あらかじめアプリをダウンロードして店内に入り、カバンや袋に商品を入れてそのまま店を出ると、持ち出したすべての商品が課金され、請求されるという非常にシンプルなショッピング体験ができる。システムは非常に秀逸で、店全体に設置されたカメラが入店時からのカスタマーの全行動を追跡、商品の保有状態を記録していく。

ここで「擬似万引き体験」を楽しむのは3回目だったが、今回も、手で商品を隠しながらカバンに入れたり、できる限りすばやく商品を取ったり、システムを欺くべく意地悪な行動をたくさんしたにもかかわらず、チェックアウト時の課金は正確だった。

この「アマゾン・ゴー」はいずれ日本でも展開されると思われるが、非常にストレスフリーな購買体験ができることはもちろん、店舗運営側から見ると、レジを廃したことによる人件費の削減だけでなく、「万引き撲滅」の点で導入の意味はあると考えられる。


「アマゾン・ゴー」の「改札」

第2回にも登場したデイブ・二カーク氏(かつてアマゾン本社で、ワールドワイドオペレーションズ・アンド・カスタマーサービスのHRヴァイスプレジデントを長年務めた)が案内してくれたが、デイブが、このアマゾン・ゴーが、政治的には波紋を呼んでいると教えてくれた。

というのも、「すべての人に利用可能な差別のない業務形態を」という方針の自治体では、スマートフォンとクレジットカードを持っていないと使えないことが障壁になり、当初は許可が下りなかったというのだ。
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編集=石井節子

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