その結果、たくさんの入り口が生まれて、たくさんの“にわか”のみなさんと出会うことができました。
映画館企画で作った映像をユーチューブにおいたところ、87万再生を記録。レストラン企画には延べ100店舗を超えるお店が参加してくれました。糸井さんとほぼ日のみなさんと「にわかラグビーファン観戦グッズ」を作ったらたくさん売れ、「ものすごく気軽にラグビーを観にいこう。」ツアーを企画したら1410人もの人が参加してくれました。
さらに、やれることはすべてやろうということで、架空の街なのに旅行情報誌「るるぶ」とコラボをして観光ガイドブックを刷ったり、「ラグビーといえばボーダー柄のラガーシャツ」という発想から、「#ボーダーうぇい」というコンセプトが生まれ、なんでもボーダーを身に着けてしまえばいいじゃないと、丸の内エリアをボーダー柄に染めてしまったりもしました。
W杯が開幕してから間もなく3週間、日本代表3連勝の影響もあってか、丸の内ラグビー神社には毎日たくさんの方が参拝に訪れ、胸が熱くなる応援メッセージを絵馬に書き込んでくれて、いま丸の内は新しい「ラグビーの聖地」とまで呼ばれはじめています。
遠い話への「入り口」をデザインする
と、ここまでラグビーを熱く語ってきましたが、何を隠そう僕自身がラグビーの超“にわか”ファンです。正直、このプロジェクトに関わるまでラグビーに触れたことがなかったし、いまだにルールも、ポジションも、選手の名前もぜんぜん覚えられません。でも、この1年ちょっとで、ラグビーの楽しみ方をたくさん見つけられました。
今回、“にわか”という言葉に出会ったことで、僕の中で「丸の内15丁目PROJECT.」のターゲットはほぼ自分自身となりました。そして今、“にわか”という言葉をとても大切にするようになりました。同時に、振り返ってみると、このコラムでも紹介してきた「注文をまちがえる料理店」も「deleteC」も“にわか”がキーワードだったことに気が付きました。
つまり、僕は認知症の“にわか”ですし、がんの“にわか”です。そして、僕のような人は、おそらくかなりの数いるんじゃないかと思います。そんな自分を含めたたくさんの“にわか”たちが、難しかったり深刻だったり距離があったりするテーマに対して、気軽に楽しく触れられるような出会い方をデザインする。それが、僕のやりたい仕事なのかもしれないな、と思い始めたりもしています。
この原稿は、きたる10月13日の運命のスコットランド戦の前に書いています。超“にわか”としては、この試合と試合の間が楽しいんです。よくわかっていないくせに、「次の注目はやっぱり姫野」とか「田村のキック次第だな」とか話したい。全然深い話はできないけど、浅くてもいいから全力でこの時間を楽しみたい……。
原稿の締めが、ただの“にわか”ファンの感想文になっていますが、一生に一度のお祭りなので編集の鈴木さんには許してもらおうと思っています。GO! JAPAN!!
番組を作らない元NHKディレクターの僕が「ひっそりやっている大きな話」(仮)
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