たとえば、映画館。「過去のW杯の映像を使える権利」を使って超胸熱な映像を製作し、丸ビル内のホールで上映しました。美術館では、かつてラグビーをやっていた世界的なアーティスト15人に声をかけ、ラグビーボール等をモチーフにした作品を作ってもらいました。
丸の内15丁目PROJECT.の映画館で上映した作品より
僕はこの企画を通して、指揮者の小澤征爾さん(成城学園中学校 右プロップ)やくまモンのデザインで有名な水野学さん(多摩美術大学ラグビー部 スタンドオフ)、世界的な建築家である坂茂さん(成蹊高校 ラグビー部ナンバーエイト)がラグビーをやっていたことを初めて知りました。こんな巨匠たちが快く参加してくれるなんて信じられませんでした。
レストラン街では、丸の内エリアの飲食店舗に声をかけ、ラグビーにひっかけた「“ラガー麺”を作ってください!」とお願いしたところ、20店舗近くが参加。めちゃくちゃユニークな麺料理を期間限定で食べられる企画になりました。
そしてついには、ラグビー室のトップが「神社をつくりたい。街には神社が必要な気がする」と言い出して、本当に神社を作ってしまいました。京都市鎮座の世界遺産「下鴨神社」と相談を重ねて、下鴨神社の境内にあり、ラグビーとゆかりの深い「雑太社(さわたしゃ)」の神様をお祀りすることに。
ラグビーを通じて生まれる人と人のつながり、それをラグビーのボールの形にちなんで“楕円のご縁”と呼び、勝利のご縁や出会いのご縁を結ぶ神社として、8月下旬に「丸の内ラグビー神社」が建立されたのです。
「にわか」を大切にする
そんな「丸の内15丁目PROJECT.」ですが、ずっと大切にしてきたキーワードが一つあります。それは、「“にわか”を大切にする街づくり」です。この言葉をくれたのは、糸井重里さんでした。
今から1年以上前、まだこのプロジェクトが構想段階だった2018年7月に僕たちは糸井さんのもとを訪ねました。糸井さんが2015年のW杯の時、日本が当時世界3位だった南アフリカに大逆転勝利した試合を見てラグビーが好きになったという記事を読んで、丸の内15丁目の映画館の館長さんをお願いできないだろうかと思ったのです。
丸の内15丁目の内容や仕組みをと聞いていた糸井さんは、「このプロジェクトはさ、“にわが”が一番っていうことだよね」と言いました。僕はその言葉を聞いて、ずきゅんと胸を撃ち抜かれた思いがしました。そうだ、それだと。
さらに糸井さんの話は続きます。「広島カープがすごいのは、カープ女子という“にわか”を受け入れたからなんだよね。“にわか”が元気なところは盛り上がるんですよ」
この言葉を聞いて、「丸の内15丁目PROJECT.は“にわか”を大切にする街づくり」をしようとみんなで決めました。ラグビーのルールが分からなくてもいい、ポジションも選手も覚えなくてもいい。とにかく、“にわか”ファンが気軽によってこられて、ラグビーの魅力や楽しさをちょっとでも持ち帰ってもらえるような入り口を作りたいと思ったのです。