アジアのベスト女性シェフが考える「仕事としての料理」

タイ・バンコクのレストラン「ガー」を率いるインド人シェフのガリマ・アローラ(左)


ガガンでは近年、日本の茶道にインスピレーションを受けた「ビーツ(鮮やかな赤色の根菜の一種)茶」なども供していたが、その元々の考えは、インドの味を楽しい見た目の良いひと口サイズの料理で提供することで、世界の人にバラエティ豊かなインドの味に親しんでもらうことだった。

ガガン・アナンドは、バンコクの「ガガン」を今年8月に閉じており、2020年に日本に店を出す予定だが、そのガガンのDNAは、ガリマという新しい才能を得て、ここバンコクで花開いていくにちがいない。

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(Chilled soup of Marian plum and tomatoes)

実際にガリマのレストラン「ガー」に足を運ぶと、女性の料理人が多いことに気づく。「たまたまだけれども、ちょうど男女比は半々くらい。ハードワークができて、信頼できる人、という基準で選んだらたまたまこうなった」のだと語る。フィリピンなど、アジアの他の国からやってきた女性スタッフも多い。

「確かに、ヨーロッパでは厨房は主に男性の世界。でも、タイでは女性が多く活躍している」そう語った後、こうも付け加えた。「これは厨房だけのことではなくてね」と。

言い訳せず「自分の選択」に向き合う

そんなガリマに、料理の世界に入ろうとしている若い女性たちへのアドバイスを尋ねてみた。

「まずは、自分が必要だと思うことは何なのか。それが『シェフになること』だとするならは、それはあなた自身の決断。『仕事を諦めて母親になる』ことでも、『子供を諦めて仕事をする』ことであっても、それも自分が決めたこと。それらの選択について、誰にも謝罪をするべきではない。それは、あなたが必要とする、あなたの人生の生き方なのだから」

誰に対して謝罪すべきでもない、だからこそ、言い訳をせずに自分の選択に全力で向き合う。「ただ頭を下げて、必死で仕事をする」のがモットーのガリマが言いたいのは、多分そういうことなのだろう。

ガリマは去年結婚した。夫とは11年前に故郷ムンバイのスポーツジムで知り合い、それ以来の付き合いだという。いまは別居婚の形をとって、パイロットの夫が月に2回ほど、フライトの際にバンコクにやってくる。

「子供はいずれ欲しいけれど、それは先の話ね」と話す。

今後は、自らのルーツである、インドのアーユルヴェーダについても学んでいきたいという。タイでは女性シェフの活躍が目立つが、柔らかな物腰で人前でのスピーチも難なくこなすガリマが、女性シェフが活躍するタイのフードシーンの牽引役となって行くのは間違いないだろう。

写真・文=仲山今日子

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