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ASIANEWS シンガポール支局長

WIGの会場でスピーチするイタリア料理「Glass Hostaria」のクリスティーナ・ボウェーマンシェフ

「女性シェフであるということが、困難だと思ったことはありますか」という質問が飛ぶと、壇上の女性シェフたちは一様に困ったように首を傾げた。

「タイでは特にないですね。厨房では、スタッフたちは私を母親のように慕ってくれます」

3月8日の国際女性デーに合わせてタイ・バンコクで行われた、女性シェフを集めてたイベント「WIG(ウーマン・イン・ガストロノミー)」での一コマ。こう答えたのは、アートギャラリーを併設するタイ料理レストラン「Yelo House」のナレー・ブーンヤキアットシェフだった。

「母親のように」と言っても、肝っ玉母さんのようなイメージを思い浮かべてはいけない。ナレーシェフは、元バレエの振付師で、モデルのような華奢な女性だ。イベントでパネリストを務めていた、イタリア料理「Glass Hostaria」のシェフ、クリスティーナ・ボウェーマンは、その言葉に「今すぐタイに移住したいわ」と驚きの色を隠さなかった。


ナレーシェフ(中央)とクリスティーナシェフ(左)

王室でも家庭でも、厨房は女性が仕切る場所

WIGは、バンコクをベースに、アジアの才能ある若手シェフを世界に紹介するイベントを行なっているGastornauts(ガストロノーツ)が、世界の女性シェフの力を発信しようと行っているもの。今年で2回目となる。

昨年、第1回の基調講演で、男女の機会平等について詳しいスペイン人ジャーナリストのマリア・カナバルが訴えたのは、「プロの厨房で働いている女性料理人は多い。しかし、シェフ(料理長)となると、その数は激減する」という事実だった。実際、活躍する女性シェフはと聞かれて、スラスラと名前が出てくる人はあまりいないのではないだろうか。

そんな中、女性シェフの活躍が著しいのがバンコクだ。タイでは女性シェフが比較的多く、例えば、2018年に「アジアのベストレストラン50」にランクインした女性シェフのレストランは、10位の「Nahm」、31位の「Paste」、37位の「Bo.lan」の3軒。タイで50位以内に入ったレストランは9軒なので、3分の1が女性シェフのものとなる。


左から、ナームのピムシェフ、ペーストのビーシェフ、ボ・ランのボーシェフ、ガーのガリマシェフ

それは、かつてタイ王室の厨房が全て女性によって成り立っていたことに由来するのではないか、と、タイ料理の歴史にも詳しいナレーシェフは言う。

「王室の厨房では最高のタイ料理が作られ、タイの伝統料理の本の著者は女性のシェフで、シェフはそれを読んで料理を学びます。またタイの人々は大家族で住むことが多く、少し裕福な家庭になれば、日々の食事のために厨房に人を雇い、その家の主婦がある意味シェフとして、厨房を采配していました。そのため、厨房で女性の指示に従う、と言うのは当たり前、と言う文化があるのです」

加えて、タイでは家屋だけでなく、食堂や商店など、家で行われている小規模なビジネスを代々女性が相続するという伝統もあるということも影響しているのかもしれない。

文=仲山今日子

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