ビジネス

2019.10.02

欧米自動車メーカーの成功と失敗から考える、サブスクビジネスの勘所

Jung Getty / Getty Images

サブスクリプション(サブスク)型ビジネスが隆盛である。サブスクリプションとは定額料金を継続的に支払い商品やサービスを利用するビジネスを指す。

瞑想アプリを提供する米国スタートアップのCalmは、社員50名ほどながら企業評価額はすでに1000億円を超えメンタルヘルス市場初のユニコーンともいわれる。このCalmもサブスクリプション型サービスである。7日間の無料トライアルで気に入ったら年間利用料金$59.99を支払って有料ユーザーへ移行する(買い切り版は$399.99)。Calmはすでに約200万人の有料会員を獲得している。マインドフルネスブームで習慣として瞑想をする人が増えている追い風もあり2018年の売上は1億5000万ドル(約160億円)と前年の4倍のペースで急成長中だ。

サブスクリプションは商品サービスを売った後も継続的に売上があがる「リカーリング・レベニュー(継続的収益)」という課金モデルの一種である。強いビジネスモデルをつくる収益メカニズムとして以前から注目されてきた。

ソニーはかねてから経営戦略としてリカーリング・ビジネス(継続収益型ビジネスモデル)に取り組んでいる。ソニー全体の売上高に占めるリカーリング・ビジネスの割合はすでに4割に達しているという。とりわけ、プレイステーション4(本体)とPS Plus(加入者限定のオンラインサービス)によるリカーリング・ビジネスが好調だ。その貢献もあって、2019年度3月期の連結決算では営業利益が22%増の8942億円と創業以来の最高益を2年連続で更新した。昨年4月に就任したソニーの吉田社長兼CEOは、「利益成長よりもリカーリング比率の増加で利益の『質』を高めることを重視する」と経営方針を説明。ハードの単発的な売上動向に左右されない、継続的に稼げるリカーリング・ビジネスに注力する姿勢を打ち出している。

欧米で先行する自動車サブスク・ビジネス

所有から利用へ、モノからコトへという消費者の価値観の変化も追い風となって、今やサブスクリプションは家電、洋服、時計、バッグ、化粧品、家具、アウトドア用品、レストラン、美容院などあらゆる分野に広がりつつある。

ここでは、プロダクト系ビジネスの代表格である自動車業界のサブスクリプションの動向を見てみる。自動車のサブスクは高級車ラインを中心に欧米市場で動きが先行している。エリアを限定してビジネスモデルのあり方を探索している企業も多く、今後サービスが変化する可能性も大きいので断定的な判断するにはやや時期尚早だが、これら海外の自動車市場のサブスクを先行例としつつ、日本における他業界の典型的なケースも見ていこう。
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文=河野龍太

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