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2019.10.02

欧米自動車メーカーの成功と失敗から考える、サブスクビジネスの勘所

Jung Getty / Getty Images


「商品を売る」から「顧客の問題を解決する」へ

サブスクビジネスを成功させるには、商品サービスを売るという発想から、顧客の側に立ち商品・サービスを通じて「顧客の問題(ジョブ)」を解決するという視点が必要だ。先述した欧米で人気のボルボのサブスクは、リースや購買にまつわる煩わしさ、購買後の車の利用に関する顧客の不便や問題を軽減するサービスが工夫されている。一方で、不人気のリンカーンのサブスクは顧客の問題を解決するという視点でのベネフィット(顧客のメリット)がはっきりしない。

例えば、高級バッグを貸し出す人気サブスク「ラクサス」は、高級バッグ購入にかかる高額な出費、ファッションに合わせて色々なバッグをコーディネートしたいという欲求、限られた予算と所有できるバッグの数というフラストレーション、自宅でのバッグ保管スペースの制約、といった従来の高級バッグ販売ビジネスにつきもののだった顧客における不便な問題をうまく解決している。

仮説の実験を通じて「ビジネスモデル・フィット」をつくる

ビジネスモデルの最適化ができずにサブスク導入に失敗するケースもよく見られる。先述のキャデラックのサブスクがまさにその例だが、早々に撤退した大手紳士服チェーンのアオキによるスーツのサブスクも、ターゲットのズレ、想定以上のオペレーションコストなど、ビジネスモデルの主要要素がバラバラでかみ合わなかった点で同じ失敗パターンとだいえる。

この手の失敗は、「ビジネスモデル・フィット」(ビジネスモデルの最適化)の問題である。通常、机上の計画だけでビジネスモデル・フィットを見出すのは困難と知っておくべきだ。ビジネスモデルが成功するための重要な仮説を洗い出し、市場での実験検証を通じて素早い修正しながらフィットを見つけ出すプロセスをあらかじめ想定しておかなければならない。

最適なプライシング・ポイントを探り出す

サブスクリプションは、プライシングが難しい。BMWのサブスク「Access by BMW」は通常の同社のリースプログラムと比べて高過ぎると不評で大幅な値下げによる価格見直しとなった。

適切なプライシングポイントを割り出すのは容易ではない。価格パターンと契約数の伸び、顧客離反率など実験を繰り返して最適解を見出す必要がある。

サブスク・ビジネスにおける価格設定や変更は、顧客の獲得と離反に直結するセンシティブな課題である。サブスク・ビジネスの代表的な成功ケースとされるネットフリックスは昨年最大18%の値上げを行った。ところが、2019年第2四半期の決算では2011年以来初めて米国での契約者数が13万人減少し同社の先行きに対して懸念が生じている。他山の石として、すでにサブスクリプションを行っている企業が何らかの事情で値上げする際も注意が必要だろう。
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文=河野龍太

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