【独占】國光宏尚が描く新たな経済圏「オアシス構想」とは何か

よむネコの代表取締役社長 國光宏尚


ここまで、「オアシス構想6カ年計画」の第一段階としての『ソード・オブ・ガルガンチュア』を紹介しました。次の段階では、2021年にオープンワールド化とVR空間上により多様な仮想世界の実現を目指します。

『レディ・プレイヤー1』の「オアシス」には、ライブハウスやカジノ、ショッピングモールなどがあり、プレイヤーは現実世界のように様々な娯楽を楽しめる。このように、戦闘以外にもできることを増やして、より多様な世界にするつもりです。

ゲーム内に新たな経済圏を作る

そこで、ゲーム内データとして、ブロックチェーン技術で独自の仮想通貨を導入します。ゲーム内データに資産価値を持たせ、自由に買い物を楽しめるようにするんです。今回の実証実験は、まさにそのための第一歩です。これだけでは「既存のゲームに登場するお金と何が違うの?」と思われるかもしれませんが、これは次の段階に大きく関わってきます。

次の段階として2022年に予定しているのが、マルチユニバース化です。原時点では、いくら仮想世界でいろんなことができたとしても、それらはあくまでよむネコや関連会社に管理されています。しかし、2022年からはサードパーティにもいろんなワールドを創造する権利を解放し、より多様な世界がつくられるようにするんです。



ここで重要になるのが、ブロックチェーン技術です。ブロックチェーン技術の特徴はデジタルデータであるにも関わらず誰にもコピーできないため、データが資産性を獲得する点。この技術が普及すれば、例えばすごく強い武器を、世界でたった10人だけしか所有できないよう限定することができる。すると、多くのプレイヤーは多額のゲーム内通貨を払ってでもそれを欲しがりますよね。

つまり、VRのMMOとブロックチェーン技術が結びつくことで、ゲーム内に新たな経済圏が出来上がるんです。しかも、この技術にMP4などの共通規格が生まれれば、ゲーム内で購入したアセットを他のゲームで使えるようにもなる。

例えば、ゲームAでの最強の武器をほかのゲームBでも使用できるんです。インターネット上の音楽ファイルがMP4などの共通規格を採用しているのと同じようにVR上でも共通フォーマット化が進めば、自社だけでなく他社のサービスともお金やアイテムのやりとりができる。これがマルチユニバース化です。

VR上での通貨が様々な場所で利用できるようになれば、ゲーム上で自分にあった稼ぎ方を模索することもできるようになります。戦闘が得意な人なら狩りで稼げばいいし、『Minecraft』が上手な人ならアバターの家を建てる対価としてお金をもらってもいいですよね。

仮想通貨の価値がさらに上がれば、現実世界の通貨との交換も可能になるでしょう。そうすれば、現実世界で無理に働かなくてもゲーム上で得意なことをすることで生計が立てられるようになります。これも、「資本主義という単一の経済制度」という現実世界のコミュニティから脱出するための手段の一つですよね。
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文=Forbes JAPAN編集部

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