【独占】國光宏尚が描く新たな経済圏「オアシス構想」とは何か

よむネコの代表取締役社長 國光宏尚


「オアシス構想6カ年計画」にブロックチェーンがもたらす利益は、ほかにもあります。そこで再び注目したいのが、『レディ・プレイヤー1』と『SAO』。実は、これらのVR世界は同じ欠点を抱えているんです。

それが、開発者による独裁です。『レディ・プレイヤー1』ではオアシスの成長を恐れた開発者のジェームズ・ハリデーが、ゲーム内のイースターエッグを発見したプレイヤーにオアシスの運営権を与えると決めたことで過酷な争いが始まり、『SAO』第1巻ではMMORPG「SAO」の開発者・茅場晶彦が、プレイヤーたちに死のゲームを強制しました。

つまり、どちらもたった1人の開発者が壮大な仮想世界を管理・支配していたからこそ、物語の引き金となる事件が引き起こされたんです。

だからVR世界でも、開発者が独裁者にならないようにディセントライズド(非中央集権)なシステムを設計しなければならない。ブロックチェーンでは、イーサリアムからイーサリアムクラシックが生まれたように、現行の仕組みに納得できなければ、ハードフォーク(システムの永久的な分裂)を起こすことができます。

より「完成度の高い世界」が生き残っていく

これをVR世界に置き換えると、あるVR世界の運営体制が気に入らなければ、ハードフォークを起こして自分が正しいと思う世界をつくることが可能だということです。すると元の世界と新たな世界が別々に運営される。あなたのつくった世界が正しいと思う人がたくさんいればその世界は生き残るし、そうでないのなら自然に消滅してしまう。現実世界でいうところの政権交代ですね。

現実世界ではこれを行使する権利は選挙制度によって保障されていますが、時期や手続きによる縛りもありますし、そもそも選挙制度が整っていない国の場合はクーデターを起こすしかない。簡単にPDCAを回せるとは言い難い状態です。

例えば、カリフォルニアなどの州ではトランプ大統領を支持しない人が多いといわれますが、本当にトランプ政権に反対ならハードフォークして自分たちの望む人をトップに掲げればいい。香港も同じで、ハードフォークで香港人が望む香港と中国政府が望む香港を両方立ち上げて、どちらが支持されるのかを確かめればいい。ですが、実際にはそんなことはなかなかできませんよね。



それが実現するのが、ブロックチェーンです。現行の政治体制や法律に不満があれば、イーサリアムのようにハードフォークをして、自分が最適だと思うルールで運営してみるんです。その結果、より完成度が高い世界が生き残る。

それが当たり前になれば、社会の制度設計という点でもVR世界の方が優れたものになるはず。単一の社会制度やルールに縛られた現実世界に対して、VR世界では複数の制度を自由に作ることができるようになるということですね。
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文=Forbes JAPAN編集部

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