【独占】國光宏尚が描く新たな経済圏「オアシス構想」とは何か

よむネコの代表取締役社長 國光宏尚


とはいえ、「オアシス」のような世界をすぐに完成させることはもちろん不可能です。しかし、VR世界に必要な要素を可能な範囲から少しずつ創っていけば、そう遠くない未来にはそれに近い世界が実現するはず。今年6月に配信を開始した『ソード・オブ・ガルガンチュア』は、その第一歩として開発しています。

順を追って、まずは『ソード・オブ・ガルガンチュア』で実現しようとしていることを説明しましょう。この10年間、時代を牽引してきたテクノロジーは、もちろんスマートフォンです。2007年に初代iPhoneが出てから、大きく成功した会社のほとんどはスマホファーストでサービスをつくっています。その例としてわかりやすいのが、スマホファーストでコミュニケーションサービスを再設計したLINE、フリマサービスを再設計したメルカリですね。

同じように、VR分野で大きく成功し、一般層にまで普及させるにはVRファーストで「VRならではの要素」を備えたサービスが不可欠です。では、「VRならではの要素」とは一体何なのでしょうか? 

私たちがこの数年間、ゲーム開発やアメリカでの投資、国内外でのインキュベーションに取り組んできたのは、それを見つけるためでした。結論から話すと、いま私が「VRならではの要素」だと考えているのは、「イマーシブ(没入感)」です。

VR世界では外見だけでなく、あなたの性格までもが自由になる

「イマーシブ」には、2つの意味があります。まず、「身体的な没入感」。こちらはイメージしやすいですね。例えば『スター・ウォーズ』を3Dテレビで立体的に鑑賞するのではなく、実際に作品世界に入り込むことができるのは、VRならではの大きな魅力です。

そして2つ目は、自分ではない何者かになる「精神的な没入感」。近年、VR業界などでブームになっている「バ美肉おじさん」という言葉をご存知でしょうか。これは「バーチャル美少女受肉」の略で、VR上で生活するためのアバターを美少女に設定するおじさんのこと。

例えば、オリジナルのアバターを作ってVR上で自由に交流できる「VRChat」というコミュニティサイトにいる日本人ユーザーのうち、なんと約90%は美少女アバターです。おじさんに限らず多くのユーザーが、VR上では美少女として活動したいと思っているんですね(笑)。

しかし、さらに面白いのは、中身は普通のおじさんなはずのバ美肉おじさんが、しばらく美少女アバターで過ごしているうちにどんどん仕草まで美少女のようになっていくことです。おそらく、周りが美少女として扱ってくれるので、自然とそれにふさわしい振る舞いをするようになるのでしょう。



ここからわかるのは、人の性格はどうやら思っている以上に外見に大きな影響を受けているということ。この考えを少し発展させると、「これまで現実世界で培ってきた性格は、本当に『自分の性格』なのか?」という疑問が湧いてきませんか? 
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文=Forbes JAPAN編集部

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