そして先週には、イタリア政府がベネチア歴史地区への巨大クルーズ船の入港を禁止し、来年までに3分の1の航路を変更させることを決めたことが、世界中で大々的に報じられた。
この2つの出来事の間には、「No Grandi Navi(大きな船はいらない)」と呼び掛ける大規模な抗議活動がベネチア市で行われ、住民からベネチアの潟から全ての大型客船を締め出すよう求める声が上がっていた。
何十年も前から起きると言われてきた今回の衝突事故は、イタリア国内外でスキャンダルとなった。さらにこの数週間後には、12階建ての船「コスタ・デリツィオーザ」が嵐の中でヨットとニアミスし、事態は悪化した。
しかし残念なことに(そして意外ではないことに)、ベネチアの狭い路地や運河、広場に毎日数千人もの観光客を吐き出している巨大クルーズ船が禁止されるとの報道は、実はメディアの誇張だった。
仏誌ルポワンは「ベネチアの潟にクルーズ船が停泊し、サンマルコ広場や狭い路地に多くの観光客を投入する時代は、おそらくこれで終わりになるだろう」と伝えた。
しかし、本当にそうなのだろうか?
これまで長年の間繰り返されてきたように、観光産業の過剰な成長はベネチアにとって大きな問題である一方、同市の主要な経済活動でもある観光は生き残りの鍵でもある。
ベネチアを訪問する観光客は年間3000万人ほどで、その多くは潟に停泊する600隻以上のクルーズ船の乗客だ。そのため観光客の流れは継続的で、食事や宿泊、ツアー、土産のニーズが確保される。同市にとっては経済的な利益であり、一方で深刻な脅威でもあるのだ。
ベネチアは数世紀もの間、観光の中心地となってきた。旅客機や巨大クルーズ船での旅が安価にできるようになった現在、観光客の増加は同市の対応できるレベルを超えており、観光客と地元住民との間の緊張が高まっている。