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2019.08.04 09:00

観光客でごった返す欧州の都市5選 代わりに旅すべき近郊都市は?

ベネチア、サン・マルコ広場の観光客(Photo by Awakening/Getty Images)

ベネチア、サン・マルコ広場の観光客(Photo by Awakening/Getty Images)

欧州で旅先として人気な都市の中には、マスツーリズムへの対応に苦慮しているところもある。国連世界観光機関(UNWTO)によると、2018年に欧州を訪れた国際観光客は約7億1300万人で、前年比で8%も増加した。特に大きな成長が見られたのは、南欧と地中海沿岸諸国だった。

欧州での宿泊を伴う滞在は2008年以降、57%増えている。観光業により都市は経済的恩恵を受けるものの、地元の住民や企業の間では住宅価格の高騰や住宅不足、環境問題、地元文化の破壊といった問題を指摘する声が高まっている。また、1日観光するだけのクルーズ船の乗客は、食事やドリンク、娯楽を船上で楽しめるため、地元にとってどれほどの価値があるのか、という疑問も生じている。

ただ、良心の呵責なく人混みを避けながら旅行したい人でも、欧州都市の歴史や文化、食を諦める必要はない。

イタリア・ベネチア

ベネチアは不運にもマスツーリズムの代表例となっており、5万人の住民に対し、推定で年間約2500万人にも上る観光客への対応に苦慮している。ベネチア住民は史跡の破壊や犯罪の増加、不動産価格の暴騰により多くの人が同市を離れていることに苦言を呈している。また観光客側も満足できていないようで、レストランでの過剰請求や名所での長蛇の列などについて不平が上がっている。

周辺で他に行ける場所としては、ベネチアと同じく建築物を評価されユネスコ世界遺産に指定されたローマ時代の都市ヴェローナがある。最大の見所は圧巻の円形闘技場で、現在でもオペラの公演に使用されている。

あるいは、国境を超えてスロベニアに入り、首都リュブリャナを訪れてもいいだろう。カフェが並んだ川沿いや、三本橋、中世の旧市街、高くそびえる城があり、緑も豊かで、水のボトル1本に8ユーロ(約1000円)を払うことなくベネチアの代わりとして十分楽しめる。

クロアチア・ドブロブニク

ドブロブニクは、大ヒットドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』に登場する都市キングズ・ランディングの撮影地となったことで、かつてない人気を集めている。最近は訪問客の数を制限しているものの、城壁に囲まれた小さな街を大人数グループで散策するツアーが非常に多く、どこへ行っても人だかりに遭遇する。

ドブロブニク市長は2016年、クルーズ船からの訪問者数が増えていることを理由に、市民に対して家から出ないよう呼び掛け、地元住民の怒りを買った。後任の市長はその後、クルーズ船の数を1日2隻までに制限し、土産物の売店数を減らし、通りのスペースを増やすためレストランの屋外テーブルに制限を設けた。

キングズ・ランディングの体験は別の場所で得られないが、アドリア海沿岸に広がるダルマチア地方全体は過小評価されている地域だ。あるいは人混みから本当に逃れたいなら、南に向かってモンテネグロに入り、絶景や歴史あるビザンティン教会の数々、素敵な海沿いの村々を楽しんでもいいだろう。
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編集=遠藤宗生

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