日本のリーダーたちは「サマーダボス2019」で何を見たのか

写真:世界経済フォーラム


「ダイバーシティの大きさは、問題解決に対するアプローチの多様性につながる」
 ──mui Lab, Inc. 代表取締役社長 大木和典氏

サマーダボスに参加できたことは本当にラッキーだった。ダイバーシティが大きく、それが問題に対するアプローチを多様にして、議論に深みがあった。様々なヒントと考えるきっかけとなった。また、改めて世界が中国に関心を払うその影響力とスピード感に圧倒された。

今後、実装されていくテクノロジーが出揃い、それを人がどのように取り組むかという点、テクノロジーにありがちなUX、人間不在の問題意識が大きく、この問題解決を図る人間中心のアプローチに共感した。自分たちの手がけるmuiの人間的、UX中心のアプローチは、課題に対する一つの解であり、これをどう発信し、良いものにしていくか。様々な課題へアプローチするスケール、具体化ができるかを考えるきっかけとなった。

また今回様々な世界のリーダーと繋がりをもてたのは、今後大きな財産となり、交流を様々な形で深めていきたい。


写真:世界経済フォーラム

「まちの『課題ドリブン』でつくるスマートシティを」
 ──福岡市長 高島宗一郎氏

サマーダボスの参加は今回で5回目、スイスを合わせると、7回目になる。これまで参加してきて感じるのは、議論が収斂されてきているということ。テクノロジーに熱狂していた3年前は、「テクノロジーが世界を変える」という「可能性」が中心だったが、昨年は「データの所有権は誰がもつのか」に移った。そして今年は現実を見据えた、「実装」というフェーズに入っている。現在は、その局面における課題にぶつかっている段階ではないか。

私が今回サマーダボスのセッションで携わった「スマートシティ」に関しても同じことが言える。実は、一党独裁や王族が統治するような国は一周遅れのように見えるが、スマートテクノロジーを入れようと思ったときの意思決定がスピーディで、スムーズに導入できている。だから、そういう国々にいまベストプラクティスが生まれてきている。むしろ、民主的な国のほうが、スマートシティを推進する上で困難にぶつかっている現状もある。

テクノロジーに熱狂する時代を終え、実装段階に入ったいま、どこをゴールにすべきなのか、どれがよい事例なのかといった、目指すべき具体像や理念へと議論は収斂されてきた。その中で、中国的なスマートシティもあるし、ドバイやシンガポール的なものもある。それらのベストプラクティスのベネフィットが、市民にどのように還元されるかを見極めていく必要がある。

そしてそれ以上に、市民に欲してもらうこと、理解してもらうことが大切なキーになってくる。市民にそのベネフィットをきちんと示して、テクノロジー・ドリブンではなく、まちの『課題ドリブン』なんだということをしっかりと発信しながら、福岡市はいろんなチャレンジをしていきたい。
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構成=谷本有香 写真=世界経済フォーラム

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