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「想定外」の研究

Drop of Light / shutterstock.com

今年も1月22日から26日までスイスのダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会。その通称「ダボス会議」の討議資料として作成された「グローバルリスク報告書2018」には、「Risk Reassessment(リスクの再評価)」という注目すべき特集も組まれている。

「ブラックスワン・イベント」を常に意識する

経営の出来不出来は危機管理にかかっていると言っても過言ではない時代だ。標準的なリスク管理は、対象となる事象が正規化分布に従うことを前提としている。一方、グローバルリスク報告書で扱っているテールリスクは「ブラックスワン・イベント」とも呼ばれ、市場においてほとんど起こらないはずの、想定外の暴騰や暴落が実際に発生するリスクのことをいう。

すなわち「ブラックスワン・イベント」とは、発生する確率は極めて低いが、一度発生すると世界規模に甚大な社会的損失をもたらすリスク─例えば、株価が大幅下落するリスク─のことを指している。

一般に、テールリスクは、数十年~数百年に一度起こるかどうかのリスクのため、債務格付けなどでは考慮対象外とされている。また、ファットテールと呼ばれる、「正規分布の両端が実現する可能性が高い分布」のリスクもある。これらに対するこれまでの伝統的かつ唯一の処方は、“太った尻尾=ファットテール”を無視して捨てることだった。この考えこそが、想定外を生むのだ。

グローバルリスク報告書2018の「Risk Reassessment」の特集では、この点に深く切り込んだ議論が展開されている。テールリスクから目を背け、「ブラックスワン・イベント」の存在を否定するという認識でよいのか? そして、そのような危機が出現した後には「想定外でした」と頭を下げるしか、これらのリスクに対処する方法はないのか? という究極の問題意識だ。

レジリエンス議論の発端は日本

「Risk Reassessment」の特集では、近年のグローバルリスク報告書を振り返り、リスク&レジリエンスの世界的な動向を確認している。そこで、まず登場するのが、日本政策投資銀行(DBJ)のBCM格付(報告書の中では「enterprise resilience」と表記している)だ。

BCM格付は、2012年のグローバルリスク報告書では、東日本大震災を機に日本から生まれたイノベーティブな金融商品として紹介されている。また、同年のダボス会議では、当時シェル石油のCEOでだったピーター・ボーサー氏が、「企業経営とレジリエンスは同義であり、影響が大きく、発生確率の低いリスクに直面して、適応し繁栄する能力の構築こそ、経営者の責任だ」と発言した。

以来、世界中で組織や社会、システムのレジリエンスに関する研究と実践が始まった。経済・産業界では、Swiss Re率いる「Resilience Action Initiative(RAI)」が、テールリスクを踏まえた組織のレジリエンス構築について、調査研究を行っている。

近年、レジリエンスと名のつく情報は多分野で活用されているが、実はその発信源は日本の東日本大震災とDBJにあったのだ。海外研究の素晴らしいところは、先人の頑張りに敬意を表し、記録に残すという点だ。

文=蛭間芳樹

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