ビジネス

2019.07.23

リニア開通の2027年、名古屋は「スタートアップに最高の場所」となっている

MTG Venturesの藤田豪


「名古屋では、自動車関係を始め、新しいCVCが多く生まれています。そこで、今年はCVC同士のネットワークを構築していく予定です。例えば、種類株式の内容や資本政策についてなど、投資の基本などの情報を共有していきます。

投資家はお金を出すだけでなく、そのあとのフォローが大事です。ファイナンスや資本政策といった基礎知識をインプットしようとしても、社内や社外で話を聞ける人は多くありません。そこで一緒に勉強会を行い、名古屋のCVC全体がレベルアップ出来るよう、皆で一緒に新しい取り組みを始めていきます」(藤田)



その一方、名古屋の起業家は手堅いビジネスを手掛けているケースが多く、いきなりグローバルを目指した事業計画書を見ることはないという。名古屋の歴史的な風土が背景にあるのか、いきなり冒険、チャレンジし、風呂敷大きく広げるタイプとは全く別のDNAがあるのではないかと藤田は考えている。

ただ、ここ数年でIPOを目指す名古屋の企業数は明らかに増えた印象だと強調する。上場する大企業が増えれば、自ずとスタートアップの売却先も増えることになり、イグジットの選択肢も増える。こうしたスタートアップにとってよいエコシステムが名古屋で生まれつつあるそうだ。MTG Venturesもそうしたエコシステムづくりに積極的に関わっていく予定だ。

投資だけでなく、MTGとスタートアップの窓口として

MTG Venturesでは今後、親会社であるMTGの事業と親和性の高いビューティテックやウェルネステック、フードテック、またクリスティアーノ・ロナウド選手に代表されるようなアスリートとビジネスの接点が多いことから、スポーツテックの領域も投資の対象としていく。これらの4つの領域を中心に、名古屋のスタートアップへも投資を拡大していくと藤田は説明する。

「MTG Venturesとしてはただ投資するだけではなく、スタートアップとMTGの窓口としての機能も担っていく予定です。そこでいい商品、いいサービスをスタートアップと一緒にやれる可能性が見つかれば、積極的に協業していきたいと考えています。独自の広範囲な販路を持ち、かつ商品を企画、開発できるというMTGの強みを、スタートアップに対して提供していき、MTGとスタートアップ、お互いが伸びることができれば良いですね」(藤田)



リニア中央新幹線の開通予定が2027年。8年後には、東京、名古屋間がたった40分で結ばれることになり、より一層身近な地域になっていく。海も山も近く、東京と大阪からどちらからも近く、住環境や子育ての環境もよいことから、名古屋がより一層発展していくだろうと藤田は期待を膨らませる。

スタートアップにとってのファシリティが整いつつある名古屋で、残るはスタートアップを志す若い起業家の育成や、周りの大企業のマインドセットが重要な課題となってくる。今後は、地域のCVC同士のネットワーク構築やエコシステムづくりをはじめ、若手起業家たちにも浸透するような活動を様々な人を巻き込んで進めていくという。

文=大木一真 写真=小田駿一

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