現在ではスタートアップ開業率は全国トップクラスの7%台にまで成長。2018年には登山コミュニティサービスを運営するヤマップが12億円、IoTデバイス向けのBLEルータを開発するBraveridgeが5億円を調達するなど、資金調達のニュースも盛んだった。
若者の活躍が目立つ一方で、長年スタートアップ経営に携わってきたベテランも福岡で活動している。ZOZOグループの研究部門であるZOZO研究所 福岡拠点のジェネラルマネージャーのほか、次世代ECコンサルティングサービス「OMNI-CORE(オムニコア )」を運営する福岡のスタートアップPearの顧問を務める進浩人もその一人だ。
進は福岡で家入一真氏らが創業したGMOペパボ(創業時はpaperboy&co.)の元取締役として、設立直後から同社の発展に尽力。2014年に退任してからは2018年1月まで東京でネットショップを運営するBASEのCOOとして活動していた人物だ。
GMOペパボ時代にはIPOも経験し、東京・福岡の双方でベンチャー経営の最先端で走り続けてきた進。そんな彼には福岡のスタートアップエコシステムは、どのように映っているのか。
お祭り好きのカルチャーが、スタートアップの空気とマッチした
──福岡が「スタートアップ都市」を宣言して7年近くが経ちました。現状をどのような段階だと捉えていますか?
蒔いた種が少しずつ花開いていますね。近年は、釣り情報サイトを運営するウミーベがクックパッドに買収されるなどM&Aのケースも出てきましたし、資金調達も活発です。
支援については、資金集めや事業相談といった起業サポートは一通り揃っていますね。東京に比べると人が少なくノイズがあまりないため、プロダクト開発などの自分と向き合ったクリエイティブな仕事には向いているように感じます。一方で、営業などの人との繋がりが決め手になる仕事については、東京に分があるでしょうね。
しかし、こうしたエコシステムが充実しているのはまだ福岡のみ。会社が拡大して100人規模を超えると、より広い規模を対象にした経営が求められますが、それに対応するためにはより広範なエコシステムを作らなければなりませんね。
──ベンチャー環境がほぼ何もない状態からたった7年でここまで大きなエコシステムに成長できたのは、なぜなのでしょうか。
私がGMOペパボで働いていた頃には、「福岡=スタートアップの街」というイメージはほとんどありませんでした。
それがここまで変化できたのは、福岡に「お祭り好き」気質の人が多いからかもしれませんね。行政や既存の企業が挑戦に積極的だという「空気」をうまくアピールし、そこに新しい物好きの若者が乗っかってくれた。