スタートアップのビジネス環境から見る名古屋
名古屋は市場サイズが適度に良いと藤田は話す。官公庁や国、大学との距離が近く、また大企業の新規事業担当者との交流も盛ん、スタートアップとの距離も近く、何か困っていたら近くの人々が応援してくれる「応援団」のようなムードがある。
藤田がコアメンバーの1人として活動している「Aichi-startup推進ネットワーク会議(愛知県)」でも来年度予算が決まり、様々な施策がスタートしていく予定だ。また、東海地区の経済団体のひとつ「中部経済連合会」では大企業の若手イノベーター人材の育成に力を入れている。
「他の地域にない名古屋の強みとして、トヨタやブラザーなど、誰もが耳にしたことがあるような製造業の大手企業に優秀な若者たちが数多くいるということです。大企業で経験を積んだ優秀な人材が、地域事業で手を挙げたり、他業種と接点を持つケースをよく見かけるようになりましたね。こうした優秀な人材とスタートアップを手掛ける同世代の若手人材が手を組むことで、他の地域にはできない新しい事業がでてきそうな雰囲気が生まれています」(藤田)
こうした地域全体の動きの背景には、「業界として変化が生まれていない」という危機意識があるという。製造業の貢献によって、愛知県のGDPはここ10年で大阪府以上の規模まで成長したが、今後は新しいテクノロジーの登場に合わせて業界も変化していく必要があるという共通認識が生まれつつある。そのため、新しいタイプのモノづくり、製造業のベンチャー企業であるMTGは、地域から応援されやすかったそうだ。
名古屋のCVCが抱える課題とは?
藤田によれば、全体の投資金額は増えているが、そもそもスタートアップの数が多くないことから、スタートアップへの投資環境は過熱しすぎているという。新しく立ち上がったVCや最近投資を始めた投資家の場合、企業の価格を適正に判断することが難しく、そのためリーマンショックの前からの経験を持つ投資家たちとはValuation感覚がずれている。投資環境が今後ピークアウトし、適正なValuationに戻ってくることで、新しいCVCは今後より丁寧に投資を実行していく必要がある。これは名古屋のCVCにも当てはまる。