ビジネス

2019.07.22 08:00

「雨ニモマケズ風ニモマケズ」 日本が誇る椿油を大島から世界へ


──日原さんから見て、大島の魅力はどこにあるのですか。

文化的な価値が多く残るところですね。例えば、なぜ大島が各地の民謡の宝庫になっていると思いますか? 江戸時代、大島は帆掛船が集結して風を待つ、いわゆる「風待ち」の港でした。そして良い風が来るまで、全国から集まった男たちが、宿の女将さんたちに民謡を伝承したのです。その歌が今日まで脈々と受け継がれている。

古き良き時代の街並みも多く残っています。とくに先述の波浮港は大島の発展につながった場所なので、是非訪れて欲しいですね。



──最後に、日原さんからのメッセージをいただけますか。

私は戦後の何もない、灰だらけの時を生きてきました。毎日、命を繋ぐことに必死な時代からすれば、現代の暮らしは想像もできないものでした。すなわち、この数十年で世の中は物凄い勢いで変化しているのです。

インターネットが普及した今日、誰でも「こうしたい」という想いさえあれば、莫大なお金をかけることなく、起業することができます。答えは全て自分の中にありますし、自分がやることで深みがでてきますから、やりたいと思うことをやり続ければ良いのではないでしょうか。

弊社は世界で初めてエクストラ・バージンの椿油を開発したと同時に、大島に新しい産業分野を生み出しました。規模は小さくても、事業を通じて、日本の誇るべきヤブ椿油のポテンシャルを世界中にアピールしていきたいですし、私たちにはその役目があると感じています。

「大島の誇りになるような化粧品をつくり続けること」、小さな企業だからこそできることだと信じて、これからも追求していきたいです。


日原行隆◎1940年、広島県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、静岡銀行入行。75年から静岡経済研究所で企業の経営相談や地域経済開発などに携わる。93年退職し、経営コンサルタントとして独立後、2000年に、伊豆大島にて国産のヤブ椿の種から非加熱精製法で高品質の椿油を製造販売する株式会社椿を設立。自社ブランドとして「生の椿油 japoneira」とカタログハウス社・通販生活にて「三百つばき」の販売を行う。プライベートでは、2018年まで日本のヨット発祥の地でNPO法人「葉山ヨットクラブ」の理事長を務める。

連載 : #醸し人
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監修=谷本有香 インタビュー=三宅紘一郎 校正=山花新菜 撮影=藤井さおり

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